薬害肝炎 その広がりの不安な現状

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   ウイルスに汚染された血液製剤で引き起こされる薬害肝炎。意外な感染源によって患者数が広がりを見せている。

   今回は、安全対策に対する医療現場や国の無頓着、無神経ぶりの結果、そのツケを患者自ら支払わざるを得ない現状を浮き上がらせた。

徐々に症状が悪化

   意外な感染源の一つは、集団予防接種。同じ注射器の使い回しが20年前まで常態化していたためにB型肝炎に感染した患者たちが今、訴訟に向け動き出している。

   旧厚生省が、一人ひとり注射器を取りかえるように通達を出したのは1988年。現在20歳半ば以上の人はB型肝炎感染の可能性を否定できない。

   もう一つは、旧ミドリ十字が製造し、C型肝炎に汚染されていた血液製剤『フィブリノゲン』に他の薬品を加えた『フィブリンのり』。これは手術をはじめ抜歯、鼻血、骨折などの際に止血・接着用に広く使用されていた。

   怖いのは、こうして知らずに感染したウイルス性肝炎は10年、20年という長い期間かけて自覚症状のないまま、徐々に症状が悪化していくことだ。

   集団予防接種の際の注射器の使い回しについては、最高裁が2006年6月の判決で、「国は感染の危険を知りながら放置していた」と、国の責任を認めた。

   畠山智之キャスターが「国の責任が認められたにもかかわらず、十分な救済がとられていないのは何故か?」と当然の疑問を。

   取材した社会部の山本剛大記者によると、B型肝炎ウイルスは感染力が強く、さまざまな感染経路がある。「国は、集団予防接種を受けていたとしてもそれが感染源とは限らない」という姿勢。

立証は至難の業

   結局、「患者一人ひとりが裁判を起こし、因果関係を立証していかねばならない」(山本記者)のだが、注射器が使い回しされていたこと、他に感染経路の可能性が無いことなどを証明する必要があり、大変な時間と労力がいる。『フィブリンのり』による感染の場合はもっと大変だ。

   国は先に『フィブリンのり』を使用した可能性のある医療機関550か所を公表した。しかし、カルテが残っていない医療機関も多い。しかも医師側は、病気の治療薬との認識がなく、単なる接着材料とみなしカルテに書かなかったケースも相当あるとみられている。

   これでは患者自ら因果関係を立証しろと言われても、至難の業だ。あまりの多さに「一律救済は困難」というのが国の本音だろう。

   国や製薬会社、医療機関が、注射器の使い回しの危険性を知らぬわけがない。

   医療の安全対策に対する無頓着、無神経ぶりが、後々大きなコストになって跳ね返ってくることを身を持って知らしめるいい機会なのだが。

モンブラン

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