小麦、大豆などの原材料の高騰から、パン、麺類、その他食料品の値上がりに見舞われているのは、むろん日本ばかりではない。生活苦にさらされるのは途上国のほうが深刻だ。
ハイチではデモ隊が軍と衝突して多数の死傷者を出し、エジプトでも市民が機動隊と衝突する騒ぎになっている。原材料価格の上昇には、干ばつ、バイオ燃料の需要増、投機マネーの流入などの原因がある。加えて、いくつかの国が自国の食糧を確保するために輸出規制にふみ切ったことが拍車をかけた。
需要ショックが要因
世界第2位の米輸出国ベトナムに米を頼ってきたのが、世界最大の米輸入国フィリピンだ。マニラでは米不足に陥って値上がりも招き、「アロヨ大統領が抑えてくれないから、生活が苦しくなっている」と市民の不満を買っている。「政権は政情不安の危機感を強めている」とナレーションは報告する。
この日、休んだ国谷キャスターの代役を務めた畠山キャスターが、「食糧需給の逼迫は新しい段階に入ったのでは?」と、柴田明夫・丸紅経済研究所所長に問いかける。
――-中国、インドなどの人口大国の急速な経済成長に伴って食料需要が急拡大し、供給が追いつけない需要ショックが要因――というのが柴田所長の分析。
こうした「危機」の背景と海外の状況を伝えたあと、日本の取り組みを紹介する。
ある総合商社は、100億円を投資してブラジルに東京23区の1.6倍の土地を取得した。広大な大豆畑を作って、安定的に確保しようとするためである。
また、米余りが課題の新潟県では、米粉を小麦の代わりに利用してパン、うどん、パスタなどをつくり出した。米粉の量産態勢を整え、家庭用米粉の販売も始めたという。
食料自給率の将来像は
と積極的な動きを番組は盛り込む。では、日本の食料自給の将来像はどうなのか。以下、柴田所長の見通し。
――まず米の値段は上がる。耕作放棄や生産調整をやっている場合ではない。資源を目一杯、活用して拡大再生産する方向を目指せば、自ずと自給率は上がってくる。農家の方には大きなチャンスが訪れてきている…。そうはいっても、国土の面積からして、自給率は50%が限界。残り50%は輸入せざるを得ない。食料の安全保障の観点から望ましい輸入の多国間の枠組みはWTOで頓挫している。中国、オーストラリアを含めて2国間の安定輸入対策が必要―-
中国製冷凍ギョウザ問題が起こった際に、日本の食料自給率は39%に過ぎないと知って、このままで大丈夫なのかと思い、パンや麺類など相次ぐ値上げにはいやな気がしたが、あまり切迫感は持たなかった。この「クロ現」を見てもさほど変化がないのは、番組のつくりが比較的、未来志向だったからだろうか。しかし、確実に忍び寄る「危機」にいつの日か直面したとき、おそらく、なす術なく恐怖するに違いない。
アレマ