本物の日本美術に出会えるはずの場所で「贋作」が氾濫――。番組によると、聚光院にある国宝の襖絵(狩野永徳作)などをはじめとして、京都の寺社で重要な文化財の複製品が次々と作られ、ホンモノと置き換える動きが進んでいるそうだ。
これらは超精密なデジタルカメラ(スキャナー)で読み取り、印刷したデジタルコピー。最新のデジタル技術によって「素材感や凹凸はないが、少し離れて見れば一般人には見分けがつかないレベル」(ゲストの佐々木正子・京都嵯峨芸術大学教授)に達しているのだ。ある住職は「本物と変わらない」と話し、寺を訪れた観光客は「てっきり本物だと思ってました」とビックリの出来映え。
本物にこだわるイタリア
そもそも文化財のデジタル化は、後世のためにいま保存しとこうという「バックアップ」的な考えではじまった。が、災害・劣化対策など、文化財の保存管理に苦慮していた寺側は、コピーをホンモノと換えるようになっていく。また、このようなデジタル複製画の一部は一般の個人や企業・団体にも営利販売されているという。
なんとも「文化財が無秩序に氾濫」(国谷裕子キャスター)する状況なのだ。ところで、そんな日本と対照的な国がイタリアだという。同国では美術品の本物らしい複製をつくるには行政機関への申請が必要で、特別な理由がなければ許可されず、展示の際は複製であることを明示しなければいけないそうだ。
その代わり、本物(の公開)にこだわる。好例がレオナルド・ダ・ヴィンチが最後の晩餐を描いたミラノの教会壁画。壁の裏側の映像は圧巻だった。壁のひび割れなどの異変を敏感に感知するセンサーが取り付けられ、巨大なコンピュータシステムが温度・湿度などを徹底的に管理する。VTRの終わりにミラノ市当局の担当者はこう締めくくる。「最高の技術で保護しながら、本物を見せていくことが重要なのです」