官から民への「理念なき」委託 苦しむ人たち

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   自治体による民間への委託が急速に進んでいる。同時に、そこで働く人たちの間で賃金低下や雇用不安も広がっているという。4月7日に放送された『クローズアップ現代』は、『官から民へ、コスト削減の裏で』と題し、この民間委託の現状にスポットを当てた。

   総合的な見通しのないまま一斉に走りだした自治体のコスト削減策。「これでは理念なき改革ではないか」というのが正直な感想である。

賃金低下・解雇……

   番組では、まず民間委託を導入した結果、賃金低下を余儀なくされたケース、解雇の憂き目にあったケースについて実例を挙げて紹介した。

   滋賀県大津市は、水道やガスの検針事業を民間の会社に委託した。これまで市の嘱託職員として17年間にわたり検針業務に従事してきた女性(56)も、そのまま業務を引き継ぐことができた。

   しかし、月20万円前後の収入は従来と変わらなかったものの、立場は「個人事業主」へと大きく変わり、ここにカラクリが。仕事に必要なバイクやガソリンなど諸経費はすべて自分持ち、年金や健康保険も自己負担となった。

   もう一つは、激しい競争入札の結果、落札できず解雇されたケース。大阪市の民間委託会社で駅の清掃業務を行ってきた男性(59)は今年2月、突然解雇された。

   市が民間委託先について競争入札を導入したために、男性が勤める会社も人件費を最低賃金(時給710円)まで落として応札。しかし、激しい競争の末、落札できなかったのだ。

   大阪市は競争入札の結果、それまで年間10億円を超える駅の清掃委託費を2007年度は半分に減らせる見通しとか。

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