「私を好きで当然」の竹内結子がウザイ でも……(薔薇のない花屋)

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   謎の多い人物、ショッキングな展開、「虐待」のキイワードと来れば、これはもうカンペキに脚本家・野島伸司の世界だ。

   花屋を営む英治(香取慎吾)は娘の雫と2人暮らし。ある日盲目の女性・美桜(竹内結子)と出会う。ところが彼女の盲目は嘘。英治に恨みをもつ安西(三浦友和)の策略により、彼を破滅させるために近づいたのだ。出産直後に亡くなった雫の母親は安西の娘らしい。美桜の目の手術費用を捻出するために、店まで手放してしまう英治…。

   野島ドラマの苦手な部分と心惹かれる部分のせめぎあい。「とっても壊れやすいから、あなたは特別大切にしなくては」なんて、くさいセリフに辟易しながらも、シーンの作り方や小道具の使い方はうまいなと思う。

   突然電話をかけてきて「渋谷にいるから私を見つけて」と美桜。この忙しいのに広域かくれんぼとはウザイ女以外の何者でもないが、「俺はあと少しであなたを見つけていた」と、英治が彼女の風に飛ばした花びらを証として掌に乗せるところには、ちょっとやられた。

   虐待されている少年を救い出す場面では、セリフはなく音楽とスローモーションの映像のみ。子供がケータイに必死の思いで打ち込んだ「SOS」の文字を見た母親は、何を思ったのだろう。

   おまけに英治が被っていた覆面というアイテム。第1話で雫も被っていたけど、ものすごいインパクト。そこから覗く瞳に吸い寄せられてしまう。焦点を目に絞り込み、物言わず何かを語らせるのに効果的だ。

   だがしかし、どうしても共感できないのが美桜の人物設定。目が見えないフリでわざとらしく転んだりするだけでも腹立たしいのに、相手が自分を好きというのを前提にしたようなそのしゃべりはどうよ。お金を騙し取ったあとでも平気で一緒にいられる神経がわからない。病気の父親のためという理由があるにせよ、犯罪まがいのことをしておいて、許されると思ってること自体許せない。

   なんであんな女を英治が好きになるのだ。目の前で着替えたり、ちょっと強がってみせたり、カレーを作ってやったくらいで、全財産つぎ込むほど夢中になっちゃうのか。美桜の嘘などとっくに気づいていると思っていたよ。慎吾クン久々の人間役なのに、せっかくのラブシーンを地団駄ガシガシ踏みながら見ることになろうとは。

   と文句を言いながらも、英治の過去と行く末は気になってしょうがない。「名もなき戦士」と「薔薇」は何を意味するのか。野島ドラマで何度も体験している衝撃結末のトラウマ。救いのあるラストであってほしいけど。

文   ツキノ・ワグマ
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