女形坂東玉三郎 「美しさ」と数字の意外な関係

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   歌舞伎--たまにテレビで歌舞伎界の特集を見たりするが、私にとって歌舞伎の世界は全くの別世界だ。私の世代、10代から20代前半の人間で、歌舞伎公演を見たことのある人間は、恐らく限りなく少ないだろう。今回の「プロフェッショナル 仕事の流儀」ゲストは、その別世界の人気女形役者、坂東玉三郎。

   歌舞伎の世界をあまり知らない人間でも彼の名前はよく耳にする。女形を代表するスター。番組で彼の舞台で映像が流れた。裁きの場に呼び出された遊女が、自らの身の潔白を証明しようとする場面。彼は、死を覚悟した女の気高さを演技に込める。美しい。女性よりも女性らしい力強さとでも言おうか。何度も同じ公演が続くが、その演技の品質を保つために工夫はあるのか。

   「こういうディティールをふんだら必ずこういうニュアンスが出ますというものじゃないんだよね。魂とか心という糸で縫いつけないと」

   表現を定型化してただそれを繰り返すだけでは役者とは呼べないらしい。

   彼は私の役者の概念を超えた人だった。舞台には台本がある。台本を覚えるとき、どうやって覚えるのだろうか。彼は自分のセリフに番号を振る。その場面にいくつ喋るのかを計算するためだという。例えば30あるセリフのうち、20から25のセリフをこんな感情で、といったように数字で流れの感覚を掴む。

   「設計図的に自分の役の流れが分かる。実は文学とかダメなんです、全然。数字で割り切った方が早く理解できるんです」

   歌舞伎の世界は文系芸術の世界。だが、そのトップスターは文学が苦手。数字化できない"魂"や"心"で芸を演じるが、その流れは数字化する。そのギャップに驚いた。歌舞伎とはどんな世界なのか、一度舞台を覗いてみるのも面白いかも知れない。

文   慶応大学・がくちゃん
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