「警察がここまでやるか」と被告の妻がいう。「1人の人間をどうしたいんやろ」
新年早々、硬派の長野智子が、白バイ事故をめぐるおかしな裁判を検証した。事故が起こったのは、06年3月3日午後2時34分、高知県内の国道で中学校の生徒25人を乗せたスクールバスと白バイが衝突。白バイの警察官が死亡した。
状況をめぐって、バスの側と警察で言い分がまったく違った。
【バス側】
・ バスは止まっていた。運転手、バスに乗っていた生徒、バスの後の車にいた中学の校長が証言している。「白バイがすごいスピードで突っ込んできた」と生徒。
【警察】
・ バスは、動いていた。衝突後白バイを3メートル引きずった。反対車線を直前に行き違った別の白バイの警官は「バスは時速10キロで走行、白バイは法定の60キロで走行」と証言。ただ、この白バイは事故そのものを見てはいない。
・ 事故から8カ月後に出した実況検分調書で、バスのブレーキ痕が左右とも約1メートルという写真を提出。バス側には寝耳に水。
【第三者】
・ 白バイは相当なスピードで走っていた。
・ 事故のあった辺りでは、白バイが日常的にスピードを出して走っていた。
高松地裁は昨年10月30日、スクールバスの運転手に業務上過失致死罪で1年4カ月の禁固を言い渡した。「第三者だからといって、信用できるわけではない」と判決はいう。被告側は控訴したが、控訴審も「調べる必要なし」と即日結審して同じ判決だった。
問題は2つ。バスは動いていなかったという多数の証言をとらず、反対車線を直前に通り過ぎた白バイの証言を採っていること。それと「ブレーキ痕」だ。
番組がブレーキ痕を検証した。時速10キロで走行しているバスの急ブレーキでは、かすかにやっと10センチしかつかない。しかも乗客には相当なショック。「当時そんなショックはなかった」と10人の生徒たち。では、1メートルのブレーキ痕がつき、白バイを3メートルひきずるには、時速何キロになるのか。そんなスピードで走ってはいなかったことは確か。
では、警察のねつ造なのか? 番組は、清涼飲料を使ってブレーキ痕を作って見せた。むろん、警察は否定するのだが、その主張と現場の痕跡はまったく合わない。
山口一臣は「これだけ合理的な疑問があるのに」
大谷昭宏は「警察は、白バイが日常的にスピードを出して走っていたことを認めたくない。また、亡くなった白バイ隊員のこともあるのだろう。しかし、これは裁判長の職務放棄だ。三審制の放棄にもなる。こうした怠慢な裁判長がいると、制度全体が危うくなる」とぼろくそだ。
大谷はさらに、「地方では、警察と裁判所の関係がよくいわれる。志布志事件でもおかしなことがありました。だから最近は、裁判報道でも裁判長の名前と顔を出そうということになっている」という。ちなみに、この裁判長は柴田秀樹氏。別の裁判でも、民間の証言より警察官の証言を重視していたと、番組はいう。