「はら減った。おにぎり食いたい」と書き残して孤独死した北九州市の52歳の男性の話が、ニューヨークタイムスに載った。「福田首相の訪米のニュースよりずっと大きい扱い」(村田晃嗣)だった。
この問題を調査していた第三者委員会がきのう(20日)出した報告書も、「市側の不適切な行為」を指摘していた。生活保護を自分の意志で辞退したように装いながら、その実は“強要”だった、などなどーー闇の北九州方式といわれるものである。
福祉事務所の元職員が証言する。「わたしもやったことがある。申請をいかに追い返すか、受給している人をいかに辞退させるか、それが仕事だった」。自立を迫る候補を決めて、目標通りを達成するーー事実上のノルマだった。
「80歳のおばあさんが孤独死したとき、同僚のケースワーカーから、1件減ってよかったねといわれた」とも。
北九州市はかつて、炭坑の閉山による生活保護の急増と、それにむらがる暴力団の不正受給で、全国ワーストワンだった。それを厚生省(当時)の指導で、30年もかけて不正受給を絶った。これが北九州方式。はよかったのだが、今度は必要な人までを切ったーーこれが「闇の方式」である。
事故のあと厚労省が行った監査でも、「不適切な行為が認められた」とされたのだが。市職員は複雑な表情だ。「昔は高く評価されていましたから、くやしい思いはある」。それはそうだろう。昨年までは「高い評価」「適正実施」だった同じシステムが、今年は「不適切」となったのだ。
山口一臣が、「厚労省というのは、生活保護にはこれこれが必要といい、財務当局が反対するものかと思ったら、逆なんですね」といった。
大谷昭宏は「本来、厚生というのは国民の側に立って命を守るべきものなのに、この国では違う。薬害C型肝炎の問題でもそう。役人は命がけで守ろうなんて端から思ってもいない。これを国民がいつ認識するかだ」と切り捨てた。