「その名にちなんで」
金髪彼女の何が悪い? 移民親子の物語

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   アメリカ在住のインド人女性たちが作った映画だ。原作はピュリツァー賞作家のジュンパ・ラヒリ、脚本はスーニー・ターラープルワーラー。監督のミーラー・ナーイルはスーニーと組んだ「サラーム・ボンベイ」でカンヌのカメラ・ドール(新人監督賞)を、また「モンスーン・ウェディング」ではベニスのグランプリを獲得している。主役のゴーゴリ役は「マスク2」などで活躍しているインド系アメリカ人、カル・ペン。インドで活躍中の母アシマ役のタブーは50本以上のインド映画に出演している。その夫アショケのイルファン・カーンは、インドからハリウッドに活躍の場を広げ「マイティ・ハート/愛と絆」などに出演している。

(C)2006 Twentieth Century Fox
(C)2006 Twentieth Century Fox

   インドからの移民一世とその子供たち二世を描くことで、アメリカに移住した他民族でも悩む共通の問題を取り上げる。母国との絆や伝統を守る一世と、アメリカで生まれ育ちながら、外国人として異端視される二世たち。親は母国の習慣や風習を維持したいが、アメリカ文化にどっぷり浸る子供たちは反発する。

   かなり昔だがLAのリトルトーキョーで、子供の頃移住して来た日系人一世の老人と知り合った。彼の日本語はおかしかったが、英語も日本語混じりの変な英語だった。日本人でもないしアメリカ人でもない。彼のID(アイデンティティー)は何だろうと考えさせられたのを思いだす。日本の文化や習慣に拘り、子供たちが日本を無視する態度に憤っていた。

   1970年代、インドで見合いしたアショケ(カーン)とアシマ(タブー)はNYへ移住する。二人の間に生まれた息子の名前に、ロシアの文豪からゴーゴリと付ける。そのゴーゴリ(ペン)を主人公に、インド人二世の物語が三十年に亘って展開する。祖国インドの習慣を重んじる両親と、アメリカ文化で育ったゴーゴリとのギャップ。高校卒業と同時にからかわれる名前を変えたいと言い出すし、白人でブロンドのガールフレンドを連れて来て両親を慌てさせる。どちらかと言えばインド人としての出自を恥じていたゴーゴリが父親の死で、両親を誇りに思うようになるまでの心境の変化を細かに描く。

   アメリカは民族のるつぼ。インド人一家を通して、移民の両親と子供たちの悩みや不安、自分の落ち着く場所、文化への同化などを考えさせる。前述した日系老人の話とも合致する、二つの文化衝突の狭間の人間を見る優れた作品だ。

恵介
★★★☆☆

2006年、アメリカ映画、20世紀フォックス配給、2時間2分、12月22日公開
監督:ミーラー・ナーイル
出演:カル・ペン/イルファン・カーン/タブー

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