「クリスマス・キャロル」の吝嗇で不機嫌なスクルージがサンタの兄として出て来たような映画。クリスマスの高揚した気分をぶち壊すムードで進む展開には楽しめない。
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そんな映画にしては豪華な顔ぶれ。主演のビンス・ボーンはコメディアンだけに日本での知名度は今一つだが、アメリカでは人気者だ。しかし、いつもの彼のお茶目さやひょうきんさが引き出されていない。ミスキャストだと思う。相手役のポール・ジアマッティは「サイドウェイ」や「シンデレラマン」で評判が高い。真面目一方のサンタを演じている。脇のキャシー・ベイツ、ケビン・スペイシー、レイチェル・ワイズはそれぞれアカデミー賞受賞の名優たちだ。他のミランダ・リチャードソンにしてもエリザベス・バンクスにしても名の知れた役者たち。こんな豪華なキャストでこんな詰らない映画を作ってしまう大プロデューサーのジョエル・シルバーに驚く。
フレッド・クロース(ボーン)はダメ人間、いつも母(ベイツ)から弟を見習えと叱られる。弟ニコラスは完璧で聖人の称号を得てサンタクロース(ジアマッティ)になる。フレッドは長じて碌な人間になっていない。詐欺を働き拘置され保釈金を弟に払って貰う。更正させるため弟は兄に「北極でクリスマス用のおもちゃ作りを手伝う」ことを条件に保釈金を払う。ニコラスの妻(リチャードソン)は大反対だ。案の定フレッドはいい加減な働き振りで、世界の子供たちが待ち望むプレゼントを届けられない危機に陥る。おまけに黒縁眼鏡にダークスーツの査察官(ケビン・スペイシー)があら捜しをして、サンタをレイオフし南極へおもちゃ工場を移転させようとする。事業縮小計画は現代社会風だがクリスマスにそぐわない。
エルフたちが働く北極の町も、世界を飛び回るトナカイの空からの眺めも美しく豪華だが、物語自体が最後は逆転するものの、わざとらしい不愉快な展開に気が滅入ってしまう。クリスマスは楽しくて愉快で誰でも仲良しでなければならない。監督はデイビッド・ドブキン。ボーンと組んだ結婚式荒しの「ウェディング・クラッシャー」(日本未公開)には大笑いしたものだが、その片鱗もこの作品には無い。
2007年、アメリカ映画、ワーナーブラザース配給、1時間55分、12月1日公開
監督:デイビッド・ドブキン
出演:ビンス・ボーン/ポール・ジアマッティ