「マリと子犬の物語」
中越地震の実話 演出「未熟」でも感動!のワケ

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   2004年10月23日、M6.8の地震が新潟県中越地方を襲い、闘牛や錦鯉で有名な旧山古志村は壊滅的な打撃を受けた。長岡に避難した村人たちの励みになったのが、母犬と三匹の子犬が生き残り16日後に救出されたこと。この実話が「山古志村のマリと三匹の子犬」の絵本となり15万部を売り上げた。映画はこの絵本を原作としている。

(C)2007 「マリと子犬の物語」製作委員会
(C)2007 「マリと子犬の物語」製作委員会

   山々や棚田など美しい自然に囲まれた山古志村。役場勤めの石川優一(船越英一郎)は、小学生の息子亮太(広田亮平)と娘の彩(佐々木麻緒)、父優造(宇津井健)との4人家族。亡くなった妻の妹、冴子(松本明子)がやって来ては家事を手伝う。亮太と彩は子犬を拾いマリと名付け、一年後3匹の子犬が産まれる。ある日大地震が勃発。家にいた優造と彩は倒壊した家屋の下敷きになる。マリは必死で助けようと、崩れ落ちた家の隙間にクビを突っ込んで吠え、木材を掻き分ける。しかし犬の力では無理。近くに自衛隊のヘリが着陸したのに気付いたマリは、安田二曹(高嶋政伸)の元に駆け寄り必死に訴える。安田は二人を救い出すが、犬を連れて行けないと言われて泣く彩。

   実話をなぞるので感動するが、TV出身、猪股隆一監督の稚拙な描写に苛立つ。全体にウェット過ぎるのだ。取り残されてヘリの後を追うマリ。延々とヘリの窓からマリの駆ける姿を写す。大体がヘリの速度と犬の走りとどっちが早いのだ。まして優造の命が危ない。危険な祖父をそっちのけでマリを連れてって、と泣き叫ぶ彩も気が知れない。犬たちと再会する石川家の場面も泣かせようとの意図が見え見え。さんざん探して諦めかけた頃三匹の子犬が現れ、更にマリを諦めかけた頃、当のマリがヨタヨタと登場する。同じパターンを繰り返し使うな!って。どうでも良い愁嘆場が次から次へ続くので2時間を越える長尺になってしまった。TVでなら、時間たっぷりの連続物に増量剤としてパターンを繰り返すのも良いが、映画では勘弁して欲しい。30分は削れる。

   俳優たちの演技もバラバラ。優一の船越は犬を見ただけで山中に響く大声を上げるし、死んだ妻を思う場面では天井を指差し、立ち上がりもするオーバーアクション。義理の妹、冴子の松本は田舎に似合わずケバイ。そこへ行くと子供たちの芝居は良い。特に彩の佐々木は、器量は良くないがしっかりと喜怒哀楽を表現している。脚本もお粗末、編集はもっとダメ、演出は未熟の映画だが、実話だけが取り柄で、感動させられる。

恵介
★★★☆☆
「マリと子犬の物語」
2007年、日本映画、東宝配給、2時間4分、12月8日公開
監督:猪股隆一
出演:船越英一郎/広田亮平/佐々木麻緒
公式サイト:http://mari-movie.jp/index.html
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