「愛の予感」
中学生が同級生殺害 被害者父と加害者母に愛生まれるか

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   スイス・ロカルノで1946年から開催されている「ロカルノ国際映画祭」。カンヌやヴェニス、ベルリンと並んで老舗の映画祭だが、一風変わったアート系の映画がいつも選ばれる。だから必ずしもアカデミー賞みたいに受賞したといっても商業的な成功には繋がらない。この「愛の予感」も本年の堂々たる金豹賞(グランプリ)の栄冠に輝いているのだが、公開される小屋はポレポレ東中野だけだ。

(c)2007 MONKEY TOWN PRODUCTIONS
(c)2007 MONKEY TOWN PRODUCTIONS

   東京の中産階級が暮らす湾岸の高層住宅。そこの中学校で14歳の女子生徒が同級の子を刺し殺したという前提がある。共に親娘2人暮らしの家庭だ。加害者の母親、典子(渡辺真起子)がカメラに答える。これからどうしたら良いか分からない。被害者の父親に済まない、謝りに行きたい。被害者の父親、順一(小林政広)は妻が1年間ガンで苦しんで死んだばかり。これからは娘と2人で楽しく暮そうとした矢先でショックも大きい。勤めていた新聞社も辞め引きこもる。加害者の母親には会いたくもない。

   2人はそれぞれ団地を引き払って地方へ行く。偶然にも北海道の片田舎で再会する。順一は鉄鋼炉の下働き。典子は北上荘という安宿の賄婦。順一が泊まる北上荘で朝食と夕食時顔を合わせるが互いに名も名乗らず、言葉も交わさない。典子は台所で卵を割り、朝は目玉焼き、夜はオムレツをひたすら作る。片付け物、食器洗い、終わってお新香と味噌汁だけのご飯。順一の食事は一番奥のテーブルで1人だけ。ご飯は半分に卵かけに味噌汁とお茶、おかずは焼き魚も野菜の煮付けも何も食べない。工場では防塵マスクをはめて黙々とこぼれた石炭を溶鉱炉へ。この典子と順一のシーンがそれぞれセリフ無しで10回以上繰り返される。ちょっと居眠りをして目が覚めても同じシーンをやっている。

   徐々に変化が生じる。順一が携帯電話を買って台所へ置く。翌日携帯はそのまま順一の部屋の戸口に返されている。典子を追っかけ外へ出た順一に平手打ちを食らわせる典子。しかしそれは淡々と描かれてドラマ的に盛り上がらず、また今まで通りの料理作り、食事シーンと作業シーンの繰り返しだ。

   エンドタイトルで小林政広は歌う。「ひたひたとしめる気をおび、ひたひたと激情を覚え」と主人公の感情の高まりを歌った後に「愛することで人は生きていける」と結論を。歌を聴くまで一体これは何の映画だろうと、セリフが全く無い無言劇なので推測でしかドラマが分からない。小林の前作、イラクで人質になり開き直ったNPOの女性の「バッシング」は未だ高く評価できるのだが。

恵介
★★☆☆☆
「愛の予感」(THE  REBIRTH)
2007年、日本映画、モンキータウンプロダクション、1時間42分、11月24日公開
監督・脚本・主演:小林政広
出演:渡辺真起子
公式サイト:http://www.ainoyokan.com/
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