「ミッドナイトイーグル」
軍事アクション、そのアリエネー設定に・・・

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   原子力科学者でその方面の受賞暦もある高嶋哲夫の原作。科学的知識や理論的組み立てに優れている作家だ。これほど面白い高嶋の原作が、映画になるとこれほど詰らなくなるという典型だ。監督・脚本がヘボなので粗が目立つ。

(c)「ミッドナイトイーグル」パートナーズ
(c)「ミッドナイトイーグル」パートナーズ

   米軍横田基地に北朝鮮の工作員が侵入し、ステルス機に爆発物を仕掛ける。その機がアルプス山中に消える。その瞬間を山にビバークしていた西崎優二(大沢たかお)が撮影する。戦場カメラマンだった西崎はこの3年活動を止め山に籠もっている。失望した妻は夫を嘆きながら病死し、残された幼い息子は妻の妹の慶子(竹内結子)が預かっている。週刊誌記者の慶子は義兄の西崎を憎んでいる。

   アルプスに消えたステルスは核弾頭を積んでおり、その核を北朝鮮工作員が爆発させれば日本国民100万人の犠牲者が出る。米軍の核持ち込みを取材中の新聞記者、落合(玉木宏)は政治的圧力で活動を禁じられ、上司を殴って松本支局に左遷されていた。高校の山岳部の後輩に当る落合は西崎を強引に誘い、ステルスの消えたアルプスへ登る。

   主人公の設定がおかしい。原作では西崎と慶子は別居中の夫婦だ。自分の子供が池で溺れた時、子供を助けるよりカメラを掴んだ西崎を慶子が許せないとする原作の方が余程自然だ。西崎も自分が情けなく戦場カメラマンを止める。映画ではアラブの子供が死ぬのを見てカメラを置くが、戦場を撮る男がそんなことで止める訳が無い。

   疑問が一杯浮かぶ。天候が荒れる山中を自衛隊の特別部隊が探索する。爆破されたのは米軍所有の核兵器搭載のステルスなのに、米軍は捜査活動に従事しない(原作では紛れも無く日米合同捜索隊だ)。米国本土から特殊部隊を派遣するのに5日かかると。機動力が武器の米軍が5日かかるなんてアリエネー。西崎たちが辿り着き潜り込む機内はまるで火事で半焼したしもた屋みたい。操縦席はお粗末な設備。落合は工作員の銃で操縦席の窓越しに撃たれる。ステルスの窓は防弾の筈だぜ。北朝鮮のへっぽこライフルが貫通するか?

   肝心の場面に迫力が無い。工作員30人を殲滅するためにナパーム弾を爆破させる。だがその爆破シーンが無い。操縦席からの中継が突然切れて白濁する画面だけだ。映画って爆破とか衝突とか、そういう非日常性のものを見せる芸だろうが。

   原作では殆ど顔を見せない西崎の息子を登場させ、延々とお涙頂戴の父子の別れは、いい加減にして欲しい。ことほど左様に監督の成島出と、脚本の長谷川康夫・飯田健三郎の才能の無さが露呈する。売りのアクションもチープな妥協ばかり。ハリウッドの専売特許の冒険アクションを邦画でやるならば、充分のお金(12億円かけたと言うが)と脚本のブラッシュアップが必要だ。役者の大沢や玉木、竹内は精一杯やっているのだから。

恵介
★★☆☆☆
「ミッドナイトイーグル」
2007年、日本映画、松竹配給、2時間13分、11月23日公開
監督:成島出 
出演:大沢たかお/竹内結子/藤竜也
公式サイト:http://www.midnighteagle.jp/
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