「4分間のピアニスト」
「女囚」と音楽そしてドイツ映画の高みに酔う

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   ドイツ映画はヨーロッパ随一の水準を誇ることは前にも書いた。かつての映画の覇者、隣国のフランスは「映画創始」の国ながら、政府の手厚い保護政策で映画を撮っても赤字になることが無い。だから一人よがりの自慰のような作品を垂れ流し、観客を楽しませることなど考えもしない。ウディ・アレンの「さよなら、さよならハリウッド」で描かれているように、目が見えず言葉も通じず撮った出鱈目な作品が、アメリカでは無残な興行成績でもフランスでは賞を貰い大当たりをする。河瀬直美の作品もカンヌでグランプリを取るやらフランスで当たるやらで大変だが、日本では見向きもされない。

(C)2006 KORDES & KORDES FILM GMBH/SWR/BR/ARTE
(C)2006 KORDES & KORDES FILM GMBH/SWR/BR/ARTE

   ドイツ映画は質が高い上に観客を楽しませることを第一義に考える。今年のアカデミー外国語賞の「善き人のためのソナタ」などが典型的で、作家性もあり、政治性もあり、その上ヒューマニズムに富む涙こぼれる優秀な作品だった。

   この「4分間のピアニスト」もレベルが高く感動を呼ぶ。殺人罪で収監されている少女ジェニー(H・ヘルツシュプルング)は問題児。刑務所内でも絶えずいざこざを起こしている。ピアノ教師として刑務所に通うクリューガー(M・ブライブトロイ)は彼女のピアノの才能を認め、花開かせて世に送り出すことが使命と考える。マスコミ受けを狙った所長の許可を得てレッスンを開始するが、一筋縄では行かない。コンテスト出場を目指して始めた二人の間で、裏に隠された色々な問題が露わになる。

   今年のドイツアカデミー賞で8部門にノミネートされ、作品賞、主演女優賞に輝いた。レベルの高いドイツ映画の中で最高の賞を取ったから、その質は分かろうというもの。首をくくった同室の女囚のポケットから煙草をくすねて悠然とふかすジェニーのショットから始まる映画はインパクトがある。主演女優賞を受けたブライブトロイ演じるクリューガーは、余命いくばくも無い老女ながら、少女の才能を信じて開花させようと必死の努力。しかしジェニーの起こす問題で挫折することも何度かある。

   1200人のオーディションから選ばれたジェニー役のハンナー・ヘルツシュプルングの野性味と繊細さの混じる演技。取材のため訪れた新聞記者の前で手錠をかけられたままピアノ演奏する場面では、その熱演と曲の強烈さに圧倒される。シューマン、モーツァルト、シューベルト、バッハなどたっぷり聞かせてくれる。司法に囲まれて凄い演奏をする迫力のシーンが強烈な印象を残す。

恵介
★★★★☆
4分間のピアニスト(FOUR MINUTES)
2006年ドイツ映画、ギャガ・コミュニケーションズ・GAGA USEN配給、1時間55分、2007年11月10日公開
監督・脚本:クリス・クラウス
主演:ハンナー・ヘルツシュプルング/モニカ・ブライブトロイ/スヴェン・ピッピッヒ
http://4minutes.gyao.jp/
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