「クワイエットルームにようこそ」
精神病棟の仲間たちとの交流、ユーモラスに描く

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   有楽町駅前のゴミ箱を引っくり返したような居酒屋が並ぶ一角がアッと言う間に整理され、その跡地にオープンしたばかりの白亜の「イトシア」。1階がパチンコ屋ではちょっと興を削ぐが、その4階に「シネカノン有楽町2丁目」がある。二つのスクリーンに分かれ座席数162のシアター1と63のシアター2。


(C)2007『クワイエットルームにようこそ』フィルムパートナーズ

   この「クワイエットルームにようこそ」は大きいシアター1での公開だ。大きいと言ってもシネコンでは小さい部類で、ビックカメラの7階にある元祖の「シネカノン有楽町」に比べて100近く座席数が少ない。入り口が、座席の並ぶ横に1ヶ所しかないのも落ち着かない。途中で出入りする人がいると嫌でも目に入るからだ。座席は東宝系の小屋に比べればやや硬いが、スッポリ収まる感覚ですわり心地は良い。階段式の傾斜はもう少し角度が欲しい。前に背の高い客が座ると頭でちょっと画面が切れる。

   本題の映画だが、原作・脚本・監督の松尾スズキの軽妙で洒脱なセリフが散りばめられて、最後まで笑い通す。今、日本のエンタメ業界で、松尾は役者をやらせても本を書かせても演出をやらせても、一番上手いのではなかろうか。

   フリーライターでようやく稼ぎ始めたバツイチの主人公、佐倉明日香(内田有紀)。勘当された親が死に、せめてもの親孝行にと、放送作家の夫、鉄雄(宮藤官九郎)に頼んだ仏壇がトラブルの元。その仏壇は大きすぎて実家に収まり切らないばかりか、独特の変な飾り付けがある。送り返された仏壇を、鉄雄と弟子のコモノ(妻夫木聡)が銀色に塗り直す。一度は父の納骨までした仏壇に何てことを、と怒った明日香が酒と睡眠薬を飲んで暴れる。そこで意識を失い、気付いたら精神病院の「クワイエットルーム」のベッドに5点拘束されていた。

   それから14日間の、閉鎖病棟の仲間たちとの交流が描かれる。意識が戻って最初に目に入るのは、ナース江口(りょう)。規則に従い、患者を物扱いにする冷たい看護師を、モデル出身のりょうが好演している。拒食症で超痩せている患者ミキ(蒼井優)は親しく接触して来る。蒼井は役作りかガリガリに痩せ、そのため目が大きくて綺麗だ。大竹しのぶは意地悪な元AV女優役。人の私生活を覗き見し、困っているとタバコやテレカを高額な料金で売り、さらに高利をつける。大竹の意地悪バアさんは流石にうまい。主役の内田有紀は9年ぶりの映画出演というが美人で芝居も飽きさせない。松尾の演出はハーモニーがとれているので、官九郎や妻夫木のオーバーな演技も枠に嵌っている。

   ジャック・ニコルソンの「カッコーの巣の上で」という精神病棟を描いた名作があった。比較にならないかも知れないが、ユーモアに包まれているこの「クワイエットルームにようこそ」の方が楽しめる。

恵介
★★★★☆
クワイエットルームにようこそ
2007年日本映画、アスミック・エース配給、1時間58分
監督・脚本:松尾スズキ
出演:内田有紀 / 宮藤官九郎 / 蒼井優
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