「脳はどれも同じ価値がある」茂木健一郎の言葉が響いた

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   映画「レインマン」を最初に見たのは中学生の時だった。互いに存在を知らない、奔放に生きる弟と、重度の自閉症を抱える兄が出会い、徐々に心を通わせていく物語。自閉症という症状を初めて認識した映画だった。

   今回の「プロフェッショナル 仕事の流儀」ゲストは、自閉症支援のプロ、腹巻智子(はらまき・ともこ)。自閉症の人々の自立をサポートし、社会の中で生活していけるようにコミュニケーションの方法を教えている。

   番組の冒頭に説明されたのが、自閉症は病気ではないということ。生まれつき脳の機能に障害があり、程度の違いはあるがコミュニケーション能力の発達が停滞する障害だ。今では「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれているそうだ。日本に120万人いると言われている。

   腹巻が行っているトレーニングとはどのようなものなのか。

   例えば、人にほめられたときに何と言って言葉を返すべきなのかを教える。その時、ホワイトボードに絵を描きながら状況の説明も詳しく付け加える。自閉症の子どもは一般に言葉で理解するのは難しいが、絵で見て理解するのは得意だからだ。「フォトグラフィックメモリー」と呼ばれるそうで、見たものの記憶能力は高い。

   先に挙げた「レインマン」だが、ダスティン・ホフマン演じる兄のレイモンドは、コミュニケーション能力を欠く代わりに、驚異的な記憶力の持ち主だった。実際にも自閉症患者で、ある分野においては人並み外れた能力を持っている人を私も知っている。

   茂木健一郎は腹巻に「(特別な能力を持つ)そういった人はどんな世界が見えているんでしょう」と質問。腹巻は「音楽が大好きな子は『空から音符が降ってくる』と言っていました。別の人で、作曲をする際にはスコアの最初から最後まで全部見えていて、それを書き留めるんだと言った人もいます」と答えた。

   茂木は脳科学者として「『脳はこうじゃなくちゃいけない!』というのではなく『脳には多様な可能性があって、どれも同じ価値があるんだよ』ということを分かってもらうのが一番大切なことの一つだと思っているんですよ」とコメントした。

   茂木のこの言葉は、すごく当たり前のことなのだが、なぜか簡単に忘れがちだ。人と違うことを、人はすぐに気にとめてしまう。人から自分が違って見られているのではないかと恐れたりもする。他人との差違は恐るるに足らず、なのだ。

   ※NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 「見えない心に、よりそって~自閉症支援・腹巻智子」(2007年10月30日放送)

文   慶応大学・がくちゃん
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