「北京の恋~四郎探母」
ありえね~!と叫びたくなる日本軍の残虐シーン

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   中国映画に日本人女性が主演する。それだけで日中の過去の贖罪が話題になると思っていると案の定だ。途中まで気持ち良く見ていたが、日本兵の残虐行為が画面に出現して凍ってしまう。


   京劇を習いたい梔子(しこ)(前田知恵)は、祖父のチャット友達で元京劇俳優の何(か)(ピー・イエンチュン)を訪ねて日本から北京へ。年配の男性の来訪を予想していた何は、若い日本女性が現われて驚くが、ともかく家へ連れて行く。そこへ8年ぶりに息子の鳴(みん)(チン・トン)が帰って来る。鳴は芝居を捨て、実業を志して家を出ていた。再び舞台に立ちたい、と父の許しを請う。何を師匠と仰ぐ徐(しゅー)(チャン・ハン)が同じアパートに住み、若い二人に稽古をつける。稽古を通じて鳴と梔子は愛を深める。

   京劇の演目は「四郎探母」。宋代の名門、楊家の四郎が戦火のさ中、15年前に別れた母を偲び逢いに行く話だ。敵味方を越えた愛が主題だけに日中関係の伏線にもなる。何家に馴染んだ梔子は春節に皆で楽しく餃子を作り、食卓を囲む直前に日本の祖父に電話を入れる。そこで祖父は何かを思い出したらしく、電話ではなくメールでそれを伝えて来る。何、鳴、徐の3人がモニターのメールを読む。

   「こんなことはありえねー」と画面に叫びたくなる。予想通り、祖父は大戦中、中国北部に出兵した日本軍の軍曹。彼を傷つけた中国女が捕虜になる。夕食に久しぶりに食事に出された肉たっぷりの餃子に兵隊たちは喜ぶが、中身は先ほどの女性の肉だと。メールの日本語を訳す梔子も梔子だが、そんなことをわざわざ送信する祖父もありえない。食料の充分な駐屯地で餓死寸前でもないのだから、日本兵は人肉を食べはしない。日本人を「鬼」とさげすみたい中国人の発想だ。

   順調だったストーリーの流れを阻止する要因だけに、これには納得性が必要だ。2005年の日中戦争勝利60周年記念に上映されたと言うが、彼の地では拍手喝采だったろう。例え日本兵の残虐行為があったとしてもこれほどまでの野獣的行為はなかったと日本人は信じている。

   中国人は何につけても大げさで誇張して話を膨らます。「南京虐殺30万人」がその良い例だ。虐殺があったとされる年の翌昭和12年、中国代表は国際連盟で日本を非難した。「日本軍は残酷にも『市民2万人』を虐殺した」と。2倍3倍は誤差範囲としても、いつの間にか15倍だ。

   梔子を演ずるのは、北京電影学院を卒業してこれが映画デビューの前田知恵、鳴はTVで活躍しているチン・トン。面長の良い男だ。何を演じるピー・イエンチュンが奥の深い演技をしている。監督はTVドラマの演出家で活躍しているスン・ティ。メリハリをつけた演出が光る。エンディングは梔子と鳴が仲良く京劇院の晴れの舞台で「四郎探母」を演じて幕を閉じる。テーマは、中国の広い心で日中の過去を受け入れ友好を推進する、というものだが、日本はそんなに酷い過去を持つのかと疑問が残る。

恵介
★★★☆☆
北京の恋
2004年中国映画、ワコー、フォーカスピクチャーズ配給、1時間38分、2007年11月3日公開
監督:スン・ティエ
出演:前田知恵 / チン・トン ピー・イエンチュン
公式サイト:http://pekingnokoi.jp/
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