「僕のピアノコンチェルト」
天才ピアノ少年のシューマンやリスト、たっぷり聞ける

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   このところピアノ映画が多い。韓国映画「私のちいさなピアニスト」やドイツ映画「4分間のピアニスト」、日本映画でも「神童」やアニメの「ピアノの森」など。そしてこのスイス映画「僕のピアノコンチェルト」。少年ピアニストが主人公の映画が多いのが面白い。しかしこの映画の少年の才能は、ピアノばかりではない。幼稚園で地球温暖化を議論し絵本ではなく辞書を読みふけるのだ。

(C) Vitusfilm 2006
(C) Vitusfilm 2006

   IQが高く数学も得意でピアノも天才の少年ヴィトス(F・ボルサニ)。父のレオ(U・ユッカー)も母へレン(J・ジェンキンス)も、息子に精一杯の期待をする。幼稚園ではなく音楽学校へ通わすヘレン。だがおじいちゃん(ブルーノ・ガンツ)だけはヴィトスを普通の子として扱ってくれる。6年後、飛び級で高校生になった12歳のヴィトス(T・ゲオルギュー)は、頭が良過ぎて生徒たちや先生からも敬遠される。「普通の人間になりたい」とおじいちゃんに相談するヴィトス。そのおじいちゃんに会うのを禁止するヘレン。思い余ったヴィトスは高い屋根からわざと落ちて頭を打ち、平凡な子供になってしまう。

   痛快なエピソードが次々に披露される。両親が開いたパーティで「ちょうちょう」のピアノを弾いていた6歳のヴィトスが突然シューマンの「勇敢な旗手」を流暢に弾き始める。お客たちの唖然とした表情。おじいちゃんのお金をプット・オプションで運用して莫大な資産を作り(少し出来過ぎだが)、父親が首にされた倒産目前の会社を救うのもカタルシスがある。ヴィトスを演じる12歳のテオ・ゲオルギューは彼自身、天才的なピアニスト。最後のオーケストラでピアノ演奏、シューマンの「ピアノ協奏曲イ短調」をフルに聞かせてくれるのには感動する。物語を追うだけでも楽しいのに、リストやシューマンなど10曲のピアノ曲をたっぷり聞かせてくれる。

   監督はフレディ・M・ムーラー。両親の決めた明るい未来へのレールを走るか、自分の内部から湧き上がる強い欲求に従うか迷う子供の物語を描きたかったという。少年以外の俳優は母へレン役のジュリカ・ジェンキンスも父役ウルス・ユッカーも舞台俳優で日本では知られていない。唯一、祖父役のブルーノ・ガンツだけは「ヒトラー~最後の12日間~」や東映映画「バルトの楽園」にも出演したスイス一著名な俳優だ。彼が顔を見せるだけで映画が締まる。

恵介
★★★★☆
僕のピアノコンチェルト
2006年スイス映画、東京テアトル配給、2時間1分、2007年11月3日公開
監督:フレディ・M・ムーラー
出演:ブルーノ・ガンツ / ファブリツィオ・ボルサーニ(6歳児役)、テオ・ゲオルギュー(12歳児役)
公式サイト:http://eiga.com/official/bokunopiano/
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