主人公の名前が松方弘子というのに、ん?と思っていたら、他の登場人物も梅宮龍彦、菅原文哉、山城新二って、ここで描かれるのは「仁義なき戦い」? でもって、タイトル・ロゴはウルトラマン、主演の菅野美穂が番宣でやっていた額に両手の二本指を当てるポーズは、セブンのウルトラビームね。
弘子(菅野)は大手出版社勤務、オヤジ系週刊誌の編集者、プライベートをほぼ犠牲にして仕事に取り組んでいる。新聞評を見ると「共感」とか「身につまされる」とか。期待して初回を見たら、あれ?なんだかドッと疲れてしまった。
ジャーナリズムの第一線で活躍してるみたいなエリート意識がプンプン。仕事と恋の板バサミって、大臣の金にまつわるスクープと記念日デートだったら、スクープの方をとるに決まっている。
同じ“働く”をテーマにしたドラマでも「ハケンの品格」のときは、よくぞ言ってくれたという爽快感があったけど、今回は置き去りにされちゃった気分でヒガミしか出てこない。寝食忘れるほど仕事に没頭できるなんて、うらやましい限りだ。「迷わず仕事を選ぶ自分がカッコいいなんて思っていない」と弘子。うそをつけ、絶対思ってるって。
けど、何回か見ているうちにだんだん引き込まれるようになってきた。第2話は、女であることを武器にチヤホヤされながら仕事している姫キャラ女・由実ちゃん(釈由美子)とのバトル。バリバリやってますを前面に出している弘子も見ていて疲れるけど、こういうタイプもムカつくのよね。だが弘子は、そんな彼女が実は陰で人一倍努力しているのを知る。たしかに媚び売っているだけでは仕事はできない。ラスト、「ぶつかっちゃダメ、かわすのよ」と、男たちの間を鮮やかに擦り抜けていく由実の姿はステキだった。
続く3話は私生活優先で仕事しない新人・田中(速水もこみち)との話。まったくやる気をみせなかった彼が、一本のタレ込み電話から色めき立ち、突然仕事に打ち込み出す。結局ガセネタをつかまされただけで結果は散々だったけど、やりたいものに出会い、熱く企画を語る姿に妙に感動してしまった。仕事で充実感を得られるということは、やっぱり幸せなことだよね。
突っ走る弘子自身より、むしろまわりの人の言葉に感じ入ることが多い。とくに編集長(伊武雅刀)とデスク(沢村一樹)。部下が一生懸命やっているところをちゃんと見ていてくれて、いきり立っていればクールダウンの缶コーヒーを差し出し、落ち込んでいたら肩をポンと叩いてくれる。怒る人、怒られる人、それぞれにフォローの言葉を投げかける。これは意外にも、オヤジたちがカッコいいドラマなのである。