ふだんはバカなことを言っている爆笑問題が、世界水準にある学者たちとトコトン語り合い、学問の本質を探る。火曜深夜にNHKで放送されている「爆笑問題のニッポンの教養」は、爆笑問題のもう一つの顔を見せてくれる番組だ。
人気も上々のようで、隔週放送だったのが10月から毎週になった。その3回目にあたる10月16日に登場したのは、「日本美術史の奇才」と呼ばれる東京大学名誉教授・辻惟雄(つじのぶお)。爆笑問題とサントリー美術館内で絵画を見ながら語りあった。
まず、「爆笑問題×学者」という組み合わせが絶妙である。ふつう学者が出演する教養番組といったら、"先生役"の学者が視聴者向けにわかりやすく説き、"生徒役"のアナウンサーやゲストが「そうなんですかぁ」とうなずき感心する一連の流れを思い浮かべそうだ。だが、爆笑問題にかかればそうはならない。いや、なれない。
爆笑問題、特に太田は博学で知られるが、学者を前にしたらはっきり言ってド素人。それにもかかわらず、彼は自分の見解をなんの遠慮もなく述べる。辻教授に「この絵についてどう思われますか」と問われても、「どうってことない絵ですよね」。そんな調子だ。
他にも、「ピカソはちょっと惜しいんだよなぁ」「日本画は、なんかちゃかしてるところがありません?」などと言いたい放題。美術史の権威に向かってよく言えるなと思っていると、意外にも辻教授は同調、話は面白い方へと転がっていく。
「芸術は“美”という言葉だけでくくれないものがある」。滑稽だったり不気味だったりする「異形のモノ」にも美が宿るという感覚が、日本人の美意識の中には伏在している。そんな辻教授の見解が示され、とりあえず絵画鑑賞会は幕を閉じた。
番組サイトの編集後記によると、撮影後、辻教授はしきりに太田の審美眼をほめていたらしい。「奇才は奇才を知るのか、妙に納得した」とディレクター。じゃあ、あの突拍子もなく聞こえた太田の発言は・・・なるほどねぇ。
学問は別にかしこまって向き合うものじゃなくていい。一見分かりにくいものでも、自分の方に引き付けて考えれば、意外と日々の生活のそこここに学問に通ずる糸口が落ちているものなんだ、とこの番組は感じさせてくれる。