少しだけ過去を変えることが出来たら、愛する者を助けることが出来たのに、と過去へ戻り、僅かに違う行動を取る。だが過去を変えることで現在を生きる人々の人生に異常が生じる――この「バタフライ・エフェクト2」は、蝶の羽ばたき程の些細なことが世界の裏側で起きる台風の原因になるといわれる、カオス理論に基づくストーリーだという。人気のアシュトン・カッチャー主演の前作はサスペンスで引っ張り、甘いロマンスで興味を引いた。
26歳のニック(エリック・ライヴリー)の人生は喜びに溢れていた。友人と設立した会社は将来性豊かだし、写真家の恋人ジュリー(エリカ・デュランス)との関係もうまく行っている。NYの美術学校を志望している彼女に、ニックはお金を儲けてギャラリーを持たせてやると約束していた。ジュリーの24歳の誕生日を祝うため、友達のカップルを誘ってピクニックに出かける。盛り上がっている最中に一本の電話。同僚のデイヴ(デヴィッド・ルイス)から緊急事態で直ぐに出社せよと。パーティを切り上げ、仲間と冗談を言い合いながら街へ向かう途中に突然パンク。車がスピンしてやっと対向車線に止まったところへ大型トラックが突っ込む。ジュリーも含め同乗者3人は死亡、ニックだけが生き残る。事故後1年、ニックの人生には碌なことが起こらない。あの時、あの事故さえ無かったら。
ストーリーは「もし」や「たら」でその変化が幾通りにも展開して行く面白さがあるものの、余りにも自在に人生の切っ掛けを変えるので、こちらは展開に追いつけなくなり戸惑う場面もしばしば。だが最後のオチは予想を覆す出来事で痛烈だ。
スピンした車に大型トラックが突っ込む場面の凄絶さといったら無い。日本映画だと音だけで衝突の瞬間のシーンは無く、その結果を見せるだけだろう。B級低予算映画でも、ハリウッドは飛ばされた車に慌てる男女、そして即死する場面をしっかり描写する。
公開中のシリーズ2作目のこの映画は、エリック・ライヴリーとエリカ・デュランスという、アシュトン・カッチャーから遙かに格落ちの2人の主演。ライヴリーは「アメリカン・パイ」などに顔を出すハンサム青年だが、カッチャーほどの魅力は無い。デュランスはTVでは活躍しているが映画の世界では無名。撮影監督を長年務めたジョン・R・レオネッティは本作が劇映画監督デビュー作。これも格落ちだ。
2006年アメリカ映画、アートポート配給
監督:ジョン・R・レオネッティ
出演:エリック・ライヴリー / エリカ・デュランス
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