「キングダム-見えざる敵」
凄まじい自爆テロと機銃掃射、アラブテロの実態描く

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   王族サウード家の専制王国サウジアラビア。王族の数は5000人を越え、国民の声を聞く国会は存在しない。国王の命令が法律で、要職は総て王族が独占する「王国(KINGDOM)」。シェブロン、エクソンモービルなどが支払うオイルマネーが王族に富をもたらす一方、失業者と貧民の数は膨大で、二極分化を絵に描いたような国だ。頑なに教えを守るイスラム教徒の国で、アラブ諸国の中で随一の親米派。だが9.11テロの実行犯19人のうち15人がサウジアラビア国民だった。


   この映画「キングダム-見えざる敵」は、1996年にサウジアラビアで起きた「ホバルタワー爆破事件」をヒントに、ピーター・バーグ監督と脚本家マシュー・マイケル・カーナハンが共同でスクリプトを仕上げた。現地リサーチの結果を踏まえて、リアリティあるFBI捜査が描写される。

   映画は、首都リヤドの外国人居住地区でのソフトボールの試合のシーンから始まる。石油会社のアメリカ人社員たちが家族揃って寛いでいる。そこへ警察官を装ったテロリストが警察車両で乗り込み、ソフトボールのグラウンドとそれを取り巻く住宅に向かい機銃掃射を繰り返す。次いで大量の爆弾を積んだ車両による自爆テロ、グラウンドでの大爆発、アパート群の崩壊。死者は100人以上、負傷者は200人を越える。捜査に向かったFBI捜査官も殉職する。

   場面は変わりワシントンDCのFBI事務所。捜査官フルーリー(ジェイミー・フォックス)、法医学調査官メイズ(ジェニファー・ガーナー)、爆発物専門家サイクス(クリス・クーパー)、情報分析官レビット(ジェイソン・ベイトマン)ら4人のスペシャリストは、現場に赴き捜査をすべきだと主張する。しかし親米派のサウジを刺激したくない国務省は相手方に捜査を任せるべきと、FBIの現地行きに強く反対する。人を介して駐米サウジ大使に会ったフルーリーは5日間限定ながら無理矢理、捜査許可を取り、リヤドに乗り込む。

   思った通り、現地のアメリカ大使館から横槍は入るは、サウジの官憲や軍隊は邪魔をするはで、捜査は思い通りには進まない。だが王子に招かれた夕食会で、フルーリーはファルコン(隼)の話をして王子の信頼を獲得、ようやく許可が降り捜査の緒につく。

   宗教の戒律、部族間の対立、官憲の序列、女性への差別などバリアーが高い中での捜査は難航する。実際はアブダビで撮影したのだが、アラブ人役者たちは髭面で目が鋭く、憎憎しげで、迫力がある。映画冒頭の自爆テロや機銃で襲うシーンの凄まじさ。ソフトボールのグラウンドにとてつもない大きな穴があき、泥水が溜まる。テロリストを追い込むカーチェイスも、彼らが隠れたアパート内での銃撃戦も並ではない。

   9月28日に公開されたアメリカでは興行成績はそれほどでも無いが、テロリストを産んだ親米の国サウジアラビアの実態を教えてくれるだけでも見る価値がある。ジェイミー・フォックスは数々の軟派ミュージシャン役を卒業して、ハードな捜査を成し遂げる硬派のFBI捜査官を好演する。俳優出身で脚本家でもある監督のピーター・バーグは「プライド 栄光への絆」などの作品がある。

恵介
★★★★☆
キングダム-見えざる敵-(THE KINGDOM)
2007年アメリカ映画、UIP配給、1時間50分、2007年10月13日公開
監督:ピーター・バーグ
出演:ジェイミー・フォックス / クリス・クーパー / ジェニファー・ガーナー
公式サイト:http://www.kingdom-movie.jp/
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