「大統領暗殺」
ブッシュ撃たれる!世界騒然の「反倫理的」映画、日本上陸

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   当コラム掲載から約2週間後の10月19日、第43代大統領・ジョージ・W・ブッシュが暗殺される。この「大統領暗殺」はそんな衝撃的なストーリーを映像化した。


   その日、シカゴ・シェラトンホテルの「シカゴ経済クラブ」のコンベンションでブッシュ大統領は演説をする。ホテルの外ではシカゴ特有の「反ブッシュ」の荒れ狂った激しいデモ。シカゴ市警とFBIの大統領警備はいつも以上に厳重だ。その厳戒網を潜り、演説を終えクルマに歩み寄るブッシュ大統領を狙い、高性能ライフルから発射された2発の弾丸。1発は肩を貫くが、2発目は胸の大動脈を切断する。病院に担ぎ込まれたが、緊急手術の甲斐なくブッシュは死亡、副大統領のディック・チェイニーが大統領に就任する。ブッシュ暗殺はともかく、チェイニーの大統領就任とは悪夢だ。

   ジョージ・ブッシュもディック・チェイニーも既存の映像から取ったものだから、本人がスクリーンに登場する。ブッシュを悼むチェイニーの演説内容も合成したのか彼の声で、画面の口も合っている。しかしブッシュが撃たれる画像なんか存在しないから射殺場面はCG技術の賜物だ。シカゴのデモやオヘア空港に到着したエア・フォース1から降り立つ大統領もニュースリールからの本物。

   フィクションとして映画に挿入されるのは、関係者が証言形式で発言するシーン。狂言廻しをする大統領補佐官のエレノア(B・A・ベイカー)や元警備主任のラリー(B・ボーランド)。また犯人と目されるアラブ人、ザーラ(H・アヨウブ)とその妻、謎の自殺をした父の秘密を暴露する黒人のイラク帰還兵サム(J・パターソン)は、何れも俳優だ。

   マイケル・ムーアの数々の記録映画がヒットしたせいで、ドキュメンタリー映画が盛んになった。それに伴いドキュメンタリー風の劇映画、モキュメンタリーが「ボラット」のようにヒットする。この作品もモキュメンタリーなのだが、暗殺される本人が映画に登場するのでリアリティがあり、映画を忘れる迫力がある。

   しかし現在生きていて、世界を動かしている大統領が暗殺される映画というのには倫理的問題があると世界的に騒動を引き起こした。日本では配給会社の作った、撃たれた瞬間の大統領が倒れる絵に「ブッシュ暗殺」と題名を入れたポスターが映倫で却下された。許可されたのは大統領の姿は無く騒然とした群集が背景だけの「大統領暗殺」と改題したポスターだ。いくら人気が無く、どんなに支持率が下がっていても現職大統領が暗殺される映画はやはり問題あるだろう。しかもこの作品はイギリス映画。他国の元首を殺すなんて。ストーリーは更に裁判に入り、証拠不十分にも拘らずアラブ人への差別が見られる判決が下される。映画はそれが真実かどうかを検証するクライマックスへと移行する。

   10月19日まであと少し。映画の通りに大統領は襲われるか、イラク戦争はどうなっているか、"悪の枢軸国"のイランや北朝鮮は? 映画はそこまで言及している。

恵介
★★★☆☆
大統領暗殺(DEATH OF A PRESIDENT)
2006年イギリス映画、プレシディオ配給、1時間33分、2007年10月6日公開
監督・脚本:ガブリエル・レンジ
出演:ヘンド・アヨウブ / ベッキー・アン・ベイカー / ブライアン・ボーランド
公式サイト:http://www.20071019.jp/
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