「幸せのレシピ」
ドイツ版オリジナルに比べるとインパクトに欠ける

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   2002年のドイツ映画「マーサの幸せレシピ」(MOSTLY MARTHA)はちょっと切なく、楽しい映画だった。ハンブルクの一流フレンチレストランで精一杯頑張る女性シェフの主人公と、人生を楽しむ陽気なイタリア人のスー・シェフとの話はドイツ映画でもこんな洒脱な作品が出来るのかと驚いた。監督と脚本は劇場映画デビューのサンドラ・ネットルベック。主演のマルティナ・ゲデック(善き人のためのソナタ)との女性パワーで映画を成功に導いた。

(c)2007 Warner Bros. Entertainment Inc - U.S., Canada, Bahamas & Bermuda.<br />(c)2007 Village Roadshow Films (BVI) Limited - All Other Territories.
(c)2007 Warner Bros. Entertainment Inc - U.S., Canada, Bahamas & Bermuda.
(c)2007 Village Roadshow Films (BVI) Limited - All Other Territories.

   素材に悩むハリウッドは早速リメイク権を買った。オーストラリアの巨匠スコット・ヒックス(「シャイン」)のメガホンのもと、キャサリン・ゼタ=ジョーンズを主人公に据え、相手役にはアーロン・エッカート、そして8歳の姪役は「リトル・ミス・サンシャイン」でアカデミー助演女優賞候補になったアビゲイル・ブレスリン。役者は悪くないがオリジナルの持つ雰囲気が無い。

   オリジナルのクソ真面目なドイツ人女性シェフと陽気でオペラを歌いながら大雑把な仕事をするイタリア人のスー・シェフとの組み合わせを、同じアメリカ人同士にしたのが大間違いだ。イタリアで修業しても、マイアミ生まれの男にはイタリア人独特の陽気さや磊落さはいまいちだ。だからこの二人の違いがさほど大きくないところから、映画としての新鮮味や驚きが薄れる。

   アメリカ版の方が優れているのは料理のメニュー。目の前に並べられる料理はどれも美味しそう。特にワイルドライスや大麦をスタッフして黄金色に焼き上げる鶉(Quail)料理は絶品だ。この料理が得意のケイト(ゼタ=ジョーンズ)は、生き生きと厨房を支配する。その城に、オーナーがケイトに無断で雇い入れたスー・シェフのニック(エッカート)が入り込んでくるという構図はオリジナルと寸分違わない。

   意地を張るケイトに姪のゾーイ(ブレスリン)がキューピッドになるのもオリジナル同様微笑ましい。ケイトは交通事故で母親を亡くしたゾーイを引き取ったが、どんな御馳走を作ってもゾーイは食べない。が、ニックの作った何の変哲もないトマトソースのスパゲッティを美味しそうに食べる場面は愉快だ。他にセラピストを登場させているが、映画としては余り意味が無い。

   出来は悪くないのだが、何度も言うようにアメリカ人同士の組合せがいけない。ここは文化や人種の衝突の場であるべきなのだ。だから喧嘩しても仲直りをしても、インパクトに欠けるのだ。

   NO RESERVATIONSの原題を「幸せのレシピ」とした邦題の方が洒落ている。オリジナルの邦題「マーサの幸せレシピ」から頂いたのも判る。

恵介
★★★☆☆
幸せのレシピ(NO RESERVATIONS)
2007年アメリカ映画、ワーナー・ブラザース配給、1時間44分、2007年9月29日公開
監督:スコット・ヒックス
出演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ / アーロン・エッカート
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