巨人の終身監督、長嶋茂雄氏の夫人、亜希子さんが9月18日未明亡くなった。が、長嶋家はどうも話が具体的でない。
17日夜、長男の一茂さん一家と食事をしたあと、一茂さんが車で自宅へ送る途中気分が悪くなり、そのまま病院へ直行したが、意識は戻らなかった。病名は心不全。64歳だった。
一茂さんは「着いたときには悪かった」「父は、意識のない母の名前を呼び続けていました」とカメラの前で語ったが、これが巨人軍のスポークスマンそのままの無表情。「長嶋茂雄という男を陰から支えるにあたって、人に言えない、家族にも言えないようなこと、トラブル、困難はいろいろあったと思います」と。
楽しかったであろう孫との食事、走っている車のなかで突然倒れ、からだの不自由な監督が駆けつけて名前を呼ぶ‥‥だれが考えてもドラマのはずが、彼の口から出ると、ただの出来事になってしまう。そういえば、監督が倒れたときもそうだった。
亜希子夫人のことが語られることも、ほとんどなかった。監督自身も、まだ元気なころ、「家庭も子どももすべて家内にまかせて何十年もたった」と感謝の言葉を述べていた。が、個々の家族がどうしたこうしたと語られることはなかった。スーパースターのプライバシーを守るセオリーででもあったのだろうか。
64年の東京オリンピックでコンパニオンだった亜希子さんに、長嶋が一目惚れ。わずか3カ月後に結婚したしたのだが、以後、巨人のV9、引退、監督就任、挫折、さらには脳梗塞‥‥とミスターの話題は尽きることがなかったが、この間亜希子さんが表に出ることはなく、02年に環境省がつくった「環の国くらし会議」のメンバーになったのが、唯一の話題だった。
みのもんたが経歴を追って「新聞の対談で知り合ったあとの長嶋さんのアタックはすごかったらしい。1カ月後に婚約発表、さすがですねぇ」というが、結婚したあとは2男2女というだけだ。さすがのみのもコメントのしようがない。「一茂君がりっぱに見えたね」
岸井成格が「古代史に興味があるんでおつき合いがありましたが、哲学にも打ち込んでいた」と意外な一面をいう。荒俣宏も「アリストテレスを読んでいたっていうんでしょ」と。ん? このあたりに長嶋家の秘密があるのか?
みのは「哲学の道は歩いたことがあるけど」「どこ?」と岸井。「京都です」と、最後はお笑いにしてしまった。