「厨房で逢いましょう」
ドイツ料理だけど美味しそう!

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   昔、ヨーロッパ映画と言えば、先ずフランス映画、イタリア映画、次いでイギリス映画が席巻し、頭が固く情緒に乏しいドイツ人たちは禄な映画を作れなかった。ところが最近は違う。


   おやっと思ったのがトム・ティクヴァ監督の「ラン・ローラ・ラン」で、そこから見応えあるドイツ作品が続出する。同じティクヴァの「パフューム」、ローランド・ズゾ・リヒターの「ドレスデン」「トンネル」。極めつけは若いフロリアン・H・フォン・ドナースマルクの「善き人のためのソナタ」だ。最後のセリフで涙が止まらなかった。今年のアカデミー外国語賞を獲得したのは当然の帰結だ。

   前置きが長くなったが、ミヒャエル・ホーフマン監督・脚本の「厨房で逢いましょう」も優れている。ドイツ人が苦手の筈のコメディタッチで笑わせ、怒らせ、泣かせる、なかなかの作品だ。主人公は料理大好きの天才シェフ、グレゴア(オステンドルフ)。デブで大男でシャイだから、女っ気は全く無い。しかしダウン症の子供を持つ、若く美しい主婦エデン(EDEN=原題)をずっと見つめている。最初は警戒していたエデン(ロッシュ)も、グレゴアが作ったケーキのトッピング、プラリネを一口食べてその美味さに驚き、すっかりファンに。

   夫が悪友と付き合う火曜日にはグレゴアのレストランの厨房に通い、彼の料理を満喫するエデン。グレゴアの料理はエロティック・キュイジーヌ。とてつもなく美味しい上に料理が官能を刺激して男女は睦みあいたくなる。大好きなエデンが通ってくれるので腕に更に磨きがかかり、客たちは皿を犬みたいにぺろぺろ舐めて一滴もソースを残さない。食べ終わった人たちは一斉にスタンディング・オベーション。しかし物事はそんなにスムーズには運ばない。ここに敵役で登場するのはエデンの夫、クサヴァー。嫉妬に駆られたクサバーは復讐に立ち上がる・・・。

   主役のヨーゼフ・オステンドルフが上手い。舞台人だけに、料理に打ち込み、憧れのエデンを見つめる緻密な演技は素晴らしい。そのデブのボリュームも「ギルバート・グレイプ」のジョニー・デップのおっかさんに次ぐ重量だ。体つきだけで笑える。残念なのはエデンのシャルロット・ロッシュが余り美しくないこと。グレゴアとクサヴァーが争う程の魅力は無い。

   映画同様ドイツ料理で美味しいレストランに出会ったことが無かったが、画面に次々と登場する美しい料理にすっかり魅惑される。見るだけでおいしそう! 仕込みの材料の吟味から調理、皿への芸術的な盛り付けなど一貫して美しい。影の料理人はフランク・エーラーと言うフランス料理人だそうだ。

恵介
★★★★☆
厨房で逢いましょう(EDEN)
2006年ドイツ・スイス映画、1時間38分
監督・脚本:ミヒャエル・ホーフマン
出演:ヨーゼフ・オステンドルフ / シャルロット・ロッシュ
公式サイト:http://www.chubo.jp/
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