知らなかったが日本にも世界に通用するプロのウィンドサーファーがいたのだ。飯島夏樹、8年間ワールドカップを転戦して入賞を何度も果たしているという。選手として活躍の最中の2002年5月に肝細胞ガンが見つかる。2度の大手術と様々な治療を施したが、2005年2月28日に永眠。飯島自身が執筆した「天国で君に逢えたら」と「ガンに生かされて」を原作に、斉藤ひろしと吉田智子が脚本を書いた。
(C)2007「Life 天国で君に逢えたら」製作委員会
映画はその日の食べ物にも困る貧乏の中、ガールフレンドの寛子(伊藤美咲)と世界を転戦する夏樹(大沢たかお)を描く。戦っても戦っても勝てない夏樹を励ます寛子。ハワイで借りたボロ屋は6か月も家賃を溜めて、電気を止められたあげく、家主に追い出される。だが崖っぷちに立った世界大会で僅差の優勝を飾り、運が開けてくる。
この優勝するレースは迫力がある。従来の日本映画なら遠景のレースとアップの夏樹の顔でごまかす所だが、コーナーを廻り7位からトップに迫り、最後に追い抜く夏樹をしっかりと追う。だから優勝の瞬間のインパクトは大きく、寛子と抱き合うシーンも感情移入で涙腺が緩む。結婚式も挙げた二人だが、幸せな生活は夏樹のガン発症でどん底に落ちる。天国から地獄へ。
大沢たかおも伊藤美咲もいい芝居をしている。大沢が健康的な選手時代とがん治療から来るうつ病とパニック症候群で部屋に籠もる晩年の差を、こけた頬や痩せた身体などで物理的にも表現している。アメリカ映画では役作りのための体重の増減は当たり前だが、なかなか日本映画では出来なかったことだから誉めて良い。子供が4人。主に長女の小夏(川島)の視点とナレーションで物語は進むが、父親に反抗する、それでいて父親が好きでたまらない13歳の川島海荷のすねた演技がうまい。「最後のときまで、パパはいつも微笑んでいた」
死ぬ瞬間まで書いていた実話だけに感動はするが、監督の新城毅彦は、もう少しテンポや情緒に強弱をつけ、観客の情感を引き出すことが出来たのではないか。如何にも泣いて欲しいと強調されると泣けないんだよなー。それでも感動的で涙のこぼれる作品だけど。飯島がみまかった土地ハワイ・オアフ島とレースが開かれたマウイ島での長期ロケで、ヒートするレースと美しい海や空が存分に堪能できる。桑田佳祐の主題歌「風の詩を聞かせて」がメロディアスで哀調があり耳に残る。
2007年日本映画、東宝配給、1時間58分、2007年8月25日公開
監督:新城毅彦
出演:大沢たかお / 伊東美咲 / 哀川翔
公式サイト:http://www.life-tenkimi.jp/index.html