このコラムの対象であるNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」が夏休みに入ってしまっているので、今回はテレビ東京の仕事人系番組「カンブリア宮殿」を取り上げる。
――お金こそが物事の価値判断基準になってしまったのではないか、などと大層なことは思わない。だがそう考えさせられることが多い。そして私はしょっちゅうお金の意味を考えてしまう。お金があればやはり幸せになれるのか。高給がとれる職種に就くのが幸せなのだろうか。
「キーエンス(KEYENCE)」という会社をご存じか。この会社、従業員の平均給与がなんと1380万円。早い話が、日本で一番たくさん給料をもらえる会社なのだ。給料が高いのは会社が儲かっているから。近年の経常利益率は毎年50%オーバーだという。
だが給料と違い、一般的な知名度は高いとはいえない。その主な事業内容は、FAセンサ(産業機械用の制御用センサ)の開発および製造・販売。私の家の中には、たぶんキーエンス製品は見あたらないはずだ。私たちの身近でよく見かける製品、ではない。作っているのは、例えば製品の最終チェック(ラベル貼りのミスを確認など)を行うためのセンサー装置だ。
キーエンスが利益を生み続けることができる理由がいくつか紹介されたが、その中でももっとも大きな“武器”が同社の営業だ。「営業ノウハウを共有する」「顧客のニーズを開発にフィードバックする」「接待はしない」などの理念に従う。その結果、合理的な営業が可能になる。徹底した合理主義が、ずば抜けた利益を生み出している、ということらしい。
高給の裏には当然、それに見合った労働が要求される。ネットで少し調べると、あちこちでキーエンスの激務ぶりがうかがわれる意見を目にする。もっとも、高給職種とよばれるものの殆どが激務だとは思うが。
“お金で幸せは買えない”――たまに耳にする言葉だが、あまり実感が沸かない。渋谷で風船配って貯めた金でブーツを買うと幸せになれるし、美味いものを食べると心も満たされる。結局、お金で幸せも買えるのでは?などとも思ったり。
お金で幸せは買えるのかどうかを確認するためにはお金がないといけない。試しにキーエンスで働きたくなってしまった。私の能力でついて行けるか、いささか不安だが。
※カンブリア宮殿「付加価値で儲けろ!~高収益を生む営業 教えます~キーエンス社長・佐々木道夫」(2007年8月13日放送)