「22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語」
歌詞に合わせようとするから無理がくる

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   大林宣彦監督は何かに拘(こだわ)る人だ。土地に拘り、人に拘り、音楽に拘る。自分の故郷、広島県尾道を舞台に「転校生」や「時をかける少女」など何本も撮り、次いで九州の大分県臼杵市に移る。臼杵の隣町・津久見市出身の伊勢正三に拘り、「なごり雪」に続いて彼の曲からタイトルとテーマを得た作品を仕上げている。

(C)DIAX,PSC,2006
(C)DIAX,PSC,2006

   大分県のことは良く知らないが、地図で見ると臼杵市の隣に津久見市がある。主人公川野は津久見市出身、元恋人葉子は臼杵市の出だ。臼杵は昔の面影を残した古い町並みだが、津久見市は大きなセメント工場があり、日本の高度成長期を思わせるゴタゴタした街並みだ。普通の監督なら津久見が経済発展を象徴する悪のシンボル、臼杵は日本の美しさを残す善のシンボルとして描くだろうが、両市を映し出す大林にはそのような善悪の判断や評価が見えない。

   福岡市の貿易会社に勤める川野俊郎(筧利夫)は44歳。社内の37歳の有美(清水美砂)と情事を重ねるが結婚まで踏み切れない。ある日、川野は俄か雨で駆け込んだコンビニのレジで「22才の別れ」を口ずさむ少女、花鈴(鈴木聖奈)に会い、曲が気になる。コンビニの外でちょっとしたことから親しくなった花鈴に「援交」を持ちかけられ驚き、戸惑う。だが放っても置けず、花鈴の身の上話を聞く。すると思いがけないことに、彼女の口からは、22才の誕生日に別れた川野の昔の恋人、葉子(中村美玲)の話が・・・。

   気になるのは、花鈴役の鈴木も葉子役の中村も美人じゃないこと。折角新人を使うならもう少し美しく可愛い人を選んで欲しい。そう言えば、大林監督の映画に余り美人女優は登場しない。審美眼の違いか、初期の尾道シリーズに小林聡美が出た時もがっかりした。

   一生懸命に歌詞に合わせようとするから腑に落ちないことが多い。22才の時に別れた恋人の娘と22年後に会う。誕生日に別れて大失恋の女性がその年に見合いをして直ぐに子供を産むかね?

   サブタイトルの「LYCORIS」(リコーリス)とは彼岸花・曼珠沙華のこと。。葉が出る時に花は咲かず、花が咲くときは葉が見えない。「葉見ず花見ず物語」とはタイミングの合わない、人生のすれ違いを意味するのだろう。

恵介
★★☆☆☆
22才の別れ lycoris葉見ず花見ず物語
2006年、日本映画、角川映画配給、1時間59分、2007年8月18日公開
監督・脚本:大林宣彦
出演:筧利夫 / 鈴木聖奈(新人) / 中村美玲(新人)
公式サイト:http://www.22saino-wakare.com/
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