おそらくだれもが心配していた通りになった。東京・荒川と隅田川支流で目撃されていたイルカが死骸でみつかった。
最初の目撃が8月8日、北区の荒川で。住民がビデオに収めていて、テレビは例によって「アラちゃん」などと報じた。ついで11日、フジテレビのカメラが数キロ上流の板橋区・新河岸川で弱っている姿をとらえていた。死骸が見つかったのもその辺りで、13日は気温33度の猛暑だった。
東京都の作業船で回収されたカマイルカは、体長2メートル。泥にまみれ、皮膚もはげている。テレビ映像はスチル写真よりもリアルで無残だ。都の職員は「水深が浅いところなので、泥のなかでもがいていた感じだ」という。「自然の生き物だから、手を加えていいものかどうか」と。専門家も最初から「細菌や汚れが付着すると危ない。早く海に帰らないと」といっていた。
「何とか救えなかったのか」と長谷川豊が、理屈を並べた。
(1)まず、管轄の問題。荒川は国土交通省、新河岸川は東京都。
(2)次が漁業権。イルカを捕獲するには、特別な漁業権が必要。
だから難しかったんだと。はたしてそうか?
「救助するためでもだめなんですか」と佐々木恭子が当然の疑問。だが長谷川は「つかまえるためには特別の資格が」「絶滅危惧種でもないですから」と役人みたいな口調になる。
室井佑月は「じゃあ漁業権とって、(海に)帰してやればよかったんじゃないの?」
笠井信輔が「やろうかどうしようか、一概にだめというのでもなかったような」といえば、長谷川も「そうなんですよね。人気者になりそうでしたから」
よく海岸に打ち上げられたクジラやイルカを海におしもどす人たちがいる。あれは漁業権なんかの話じゃない。今回は、だれもその気にならなかったから、こうなった。