「プロヴァンスの贈りもの」
辣腕トレーダー、南仏「スローライフ」の中へ

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   この映画はいわく付きの作品である。

(C) 2005 TWENTIETH CENTURY FOX. All rights reserved.
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   本来なら20世紀フォックスが配給予定だった。しかしフォックスは監督リドリー・スコットに苦い思い出がある。一昨年スコットが力を入れ何回も来日してPRに努め、宣伝費もふんだんに使った「キングダム・オブ・ヘブン」が大コケしたのだ。弟のトニー・スコットは単純な娯楽アクション映画を作ってくれるが、兄リドリーは哲学を振り回しややこしい。この作品も当初、フォックス配給の予定でマスコミ試写を廻していたが、突如中止。暫くして角川映画がフォックスから日本の配給権を買い取って公開の運びになったものだ。

   原題はA GOOD YEAR。ワインの当たり年、良いブドウの採れた年という意味合いで、ワイナリーを舞台にした作品である。プロヴァンスはフランスの南東部の地中海に面した地域。マルセーユ、アルル、アヴィニヨン、エクサンプロヴァンスなど日本でも知られる都市が散在する。ブドウそしてワインの名産地だ。

   ロンドンの金融界で辣腕トレーダーとして活躍するマックス(ラッセル・クロウ)に、叔父のヘンリー(A・フィニー)が亡くなったという知らせ。最も近い血縁者のマックスにワイナリーが遺された。相続と売却の手続きを即座に済ませ、ロンドンへトンボ帰りの予定でプロヴァンスへ飛ぶ。

   ワイナリーにどれほどの価値があっても、数百億円を動かす金持ちのマックスには興味がない。しかしプロヴァンスに滞在するうちに、考えが変わって行く。この辺りが映画のポイント。昔からの生活習慣を持ち、時間に逆らわず生きる素朴で自然な暮らし。ロンドン金融界の生き馬の目を抜くような、人間関係のギスギスした生活とは何という違いか。その上、ワイナリーに向かうクルマで轢きそうになったファニー(M・コティヤール)という鼻っ柱の強い女性との出会いも引っかかる。

   マックスを演じるのは「グラディエーター」でリドリー・スコット監督と組んだラッセル・クロウ。良く知り合った者同士で、クロウも息の合ったゆとりの演技を見せる。ファニーのマリオン・コティヤールは「TAXi」で注目された。両親ともに舞台俳優。笑顔が魅力的だ。マックスの少年時代に出て来るヘンリー叔父、アルバート・フィニーも71歳で元気な顔を見せている。

   原作者はロンドンでリドリーの広告業界の仲間だったピーター・メイル。イギリスを離れて30年来のプロヴァンスの住人というところが、主人公の叔父を思わせる。ロンドン金融界と南仏ワイナリーの天地の差を描き、人間としての男の生き方を問うている。

恵介
★★★★☆

プロヴァンスの贈りもの(A GOOD YEAR)
2006年アメリカ映画、角川映画配給、1時間58分、2007年8月4日公開
監督:リドリー・スコット
出演:ラッセル・クロウ / マリオン・コティヤール
公式サイト:http://jp.franceguide.com/home.html?NodeID=1129&EditoID=88417

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