今年の4月9日に始めたこの「365日映画コラム」も、7月17日で100日目となる。 タイトルの通り毎日掲載してきたから、ちょうど100回目だ。それを記念して、今週と来週の「日曜コラム」では「2007年上半期の映画ベスト10」を、邦画と洋画に分けて挙げてみたい。今週は邦画部門だ。
(c)2007「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」製作委員会
筆者が1月から6月までに見た映画の本数は233本。去年と同じペースだ。日本映画72本、外国映画161本。その中から、日本映画のベスト10を選んだ。今年前半は優れた作品が揃っている。
1位 | 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ |
2位 | サイドカーに犬 |
3位 | 舞妓Haaaan!!! |
4位 | 憑神 |
5位 | キサラギ |
6位 | 選挙 |
7位 | 眉山 |
8位 | 新ドラえもん のび太の新魔界大冒険 |
9位 | 河童のクゥと夏休み |
10位 | 鉄コン筋クリート |
トップ4はダントツで素晴らしい出来栄えだ。「腑抜けども~」は北陸の田舎を舞台にした愛憎入り混じったダークな家族ドラマに新機軸を見出し、サトエリが熱演している。「サイドカー~」は10歳の女の子が、突然家にやって来た謎の女性との生活を懐かしく思い出す物語。主演の竹内結子が素晴らしい。「舞妓~」はドタバタになりがちな喜劇が宮藤官九郎の巧みな筆で爆笑コメディになっている。日本の喜劇も捨てたものではない。「憑神」は降旗康男監督、浅田次郎の原作。妻夫木聡主演の幕末時代劇は大義を追い求める主人公を通して「日本人」を描いている。
上位4本は特に脚本が優れていたが、5位の「キサラギ」も古沢良太の脚本 の力。香川照之等が演ずる5人の男たちがアイドルの命日に集まり、彼女の突然の死を探る密室劇。「選挙」は地方選挙の落下傘候補を主人公に、「電柱にも頭を下げる」ドブ板選挙の2週間に密着したドキュメンタリー。筋書きの無いライブドキュメンタリーが面白い。「眉山」は歌手のさだまさし原作。死を前にした母に接し、母の気持ちを理解出来るようになった娘の物語。犬童一心の演出が冴える。久しぶりの宮本信子が良かった。
8位「新ドラえもん~」は大山のぶ代などの声優陣を一新。作家の真保裕一に脚本を書かせ、大人も楽しめるSF映画に仕立てたのは成功だった。監督はこの手のアニメに珍しい女性の寺本幸代。「河童のクゥと夏休み」は江戸時代から現代に蘇った河童の子供の目を通して日本の社会を痛烈に批判した秀作アニメ。特に環境破壊を訴えているが、固いテーマとは別に絵も綺麗で日本昔話風に楽しめる。「鉄コン筋クリート」松本大洋の漫画を映画化。アミューズメントパークに変貌しようとする下町に育ったシロとクロ、二人の孤児の不思議な冒険譚。俯瞰の視点が変わっている。
この邦画ベスト10の中には、いま公開中のものもあれば、すでにDVD化されているものもある。ぜひ観賞することをお薦めしたい。
※1位は「バベル」! 07上半期「洋画ベスト10」