「河童のクゥと夏休み」
パステル調の綺麗なアニメ「現代のゆがみ」を突く

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   何の先入観も無くこの子供向けアニメを見たのだが、感動した。河童の子供クゥが主人公。300年前の河童の子供の目を通して、現代の日本社会の歪みや矛盾、更に環境破壊を非難している。

(c)2007 木暮正夫/「河童のクゥと夏休み」製作委員会
(c)2007 木暮正夫/「河童のクゥと夏休み」製作委員会

   映画の冒頭は江戸時代にさかのぼる。村役人の侍に河童の父が皆の窮状を訴えたところ、賄賂を受け取っていた侍が逆上して、父親が斬殺される。子供は侍の振り下ろす刀を潜り抜け、逃れる途中に大地震が起きる。そして地中の割れ目に挟まれたまま時代を経て化石となり、現代の東京・東久留米市の川原に転がっている。小学生で苛めっ子の康一が、一人で帰る途中の川原で、面白い形の石を拾い家に持ち帰る。きれいにしようと洗面器の水につけると驚いたことに、河童の子供が生き返る。乾燥した水中花を蘇らせるみたいだ。

   康一の家は4人家族の普通の家庭で、クゥと名付けた河童の子どもは家族全員に好かれてそのまま居つく。江戸時代の言葉を喋る河童のクゥと現代の流行り言葉との違和感が面白い。クゥの目を通して現代社会に潜在する子どものいじめや自殺、マスコミの害毒、環境問題などが浮き彫りになって行く。

   昔話風ののんびりした口調に痛烈な風刺を抱いたアニメだ。絵が綺麗で画風が優しく、色はパステル調で心地良い。昔の清水昆の漫画のトーンを思わせる。犬の「おっさん」が自分の身を省みずにクゥを助けようとするシーンには心を動かされる。

   監督の原恵一は「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」などの演出をしたベテラン。原作は児童文学の木暮正夫。今年1月に他界したが、彼の「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」からストーリーは取った。吹き替えの声優は、冨沢風斗、横川貴大、植松夏希などだが、脇でココリコの田中直樹、西田尚美、なぎら健壱、ガレッジセールのゴリなど名が知れたお笑いなどを起用している。アニメながら2時間を越える作品だが、変化球は使わず、真っ直ぐ問題点を突く。心温まる胸にジーンと来る展開に全く長さを感じずに見終わる。

   7月28日に池袋シネ・リーブル他で夏休み公開されるが、ほかの何の役にも立たない商業的なアニメよりよほど勉強になる漫画映画。お子様を連れて是非お見逃しないように。

恵介
★★★★☆
2007年日本映画、松竹配給、2時間16分、2007年7月28日公開
監督・脚本:原恵一
声の出演:冨沢風斗(クゥ)/ 横川貴大(康一)
公式サイト:http://www.kappa-coo.com/
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