国分太一くん、オレも左利きなんだ

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   6月27日に掲載された「国分太一くん、箸は右手で持とうよ」という一文に、読者のみなさんから多くのコメントが寄せられた。その中身は「左利きへの差別だ」という批判が多かった。でも、実はオレ自身も、太一君と同じ左利きなんだ。

   小さいころ左手の箸について厳しく注意され、直すのにものすごく苦労した。娘も同類だったので、特殊なスプーンを買ってきて右手で箸が持てるようにした。だから、左利きの人を非難したり、軽蔑したりするつもりはない。

   右手で箸を使ったほうがいいと思うのは、それが食事のマナー、作法だと考えるからだ。日本の文化では右手で箸を持つのが食事の作法とされてきたし、箸の置き方や料理の配膳の仕方は、右手で箸を持つことを前提にしている。

   そして国分太一君に「箸は右手で持とう」とあえて注文をつけたのは、彼が「芸事」にたずさわるタレントだからだ。たとえバラエティであっても、テレビ番組で食事をするのはプライベートではなく、れっきとした仕事である。メシを食うのも芸のうち、なのである。

   この前、太一君が主演した「しゃべれども しゃべれども」という映画を見た。若い落語家という役どころを見事に演じていた。その落語の世界では、箸はかならず右手を使うように訓練する。型として決まっているということもさることながら、左手でそばを食ったら別の人物になりかねないからだ。

   桂米助という落語家がいる。根っからの左利きで、矯正するには非常に苦労したらしい。あるとき、彼が出演した「隣の晩ごはん」というテレビ番組でうっかり箸を左手にもってメシを食ったところ「噺家の風上にも置けない」と、ふだんは温厚な師匠の米丸からこっぴどく叱られたという。

   太一君には役者として大成してほしい。テレビを見ている多数の視聴者に対する影響力も考えると、日本の食文化にのっとったマナーを大切にしてほしいと思うのだ。今回はそんなことが念頭にあったので、つい言葉に勢いがついてしまったのかもしれない。

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