「ボルベール<帰郷>」
強く美しいスペイン女性、ペネロペ・クルスが熱演

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   スペインの美人女優ペネロペ・クルスがこんなに可愛く、芝居が上手かったのかと再認識する映画だ。やはり故郷の水と仲間の映画人たちという環境が良いのだろう。トム・クルーズとの仲を噂された「バニラ・スカイ」などのハリウッド映画を離れて、久しぶりにスペインに戻り、98年の「オール・アバウト・マイ・マザー」以来のペドロ・アルモドバル監督とのコンビになる作品だ。「オール・アバウト~」でアカデミー賞外国語映画賞、「トーク・トゥ・ハー」で同脚本賞のアルモドバル監督はスペインを代表する巨匠になっている。映画の舞台となるラ・マンチャはアルモドバルが生まれてから8歳まで過ごした故郷。


   監督の作品で必ず音楽を担当するアルベルト・イグレシアス。クルスとアルモドバルの帰郷や、初期の監督作品の多くに出演していたカルメン・マウラの19年振りの出演を記念したか、タンゴの名曲「ボルベール(帰郷)」をクルスに唄わせ、タイトルとしている。

   ライムンダ(クルス)は明るく楽しい働き者。夫は失業中で、15歳の一人娘パウラ(Y・コバ)は思春期。ある日とんでもない事件が起こる。パウラが、実父じゃないからとセックスを迫る義父を殺したのだ。とりあえず隣の空き屋のレストランの大型冷凍庫に死体を隠す。同じ夜、近しい伯母も亡くなり、姉のソーレ(ドゥエニャス)がラ・マンチャの葬儀に行くと、死んだ筈の母が幽霊になって現れると言う噂を聞く。実際、葬儀を終え家へ帰ったソーレの車のトランクには、母親(マウラ)が潜んでいたのに驚く。

   ライムンダが死体処理に困っているのに、近くで映画のロケをしている撮影クルーから食事を頼まれるシーンは愉快だ。お金も稼がなければいけない、死体も隠さなければならない。死体を隠した冷凍庫を巧みに避けながらクルーに愛想を振りまくライムンダ。また、ソーレは幽霊の母親を人に見られてはいけない。ソーレの家で、ライムンダが母親を「匂い」で感じてしまう場面にも大笑いする。母はベッドの下でいつものクセのオナラをしてしまうのだ。

   「死」をテーマに扱うが、ライムンダの娘を守る強い母親としての側面と自分の母親を慈しむ優しい側面、近所の人たちの親切やお節介をコメディタッチで描いている。アルモドバル監督は初めて自分の映画で「死」を扱ったと話している。「生まれて初めて、恐怖感なしに死を直視できた。未だ納得はしていないが、死が存在するという概念を取り入れ始めている」と。今後のアルモドバル監督の「死」を扱う作品群が楽しみだ。

恵介
★★★★☆
ボルベール〈帰郷〉(VOLVER)
2006年スペイン映画、ギャガ・コミュニケーションズ配給、2時間00分、2007年6月30日公開
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス / カルメン・マウラ / ロラ・ドゥエニャス
公式サイト:http://volver.gyao.jp/
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