「キサラギ」
演技派男優5人が魅せる!コミカルかつスリリングな密室会話劇

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   3月初旬、有楽町の朝日ホールで「キサラギ」の完成披露試写会が行われた。主演の5人、小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、ドランクドラゴンの塚地武雅、香川照之が黒のスーツで登場。監督の佐藤祐市と一緒に舞台挨拶をした。「ともかく楽しい映画」「細かな筋は言えない」「こんなに素晴らしい作品は初めて」など楽しげに喋る。

(C)2007『キサラギ』フィルムパートナーズ
(C)2007『キサラギ』フィルムパートナーズ

   確かに作品の出来は良い。アイドルの如月ミキが自殺して一年。ファンサイトの主催者・家元(小栗)の呼びかけで熱烈なファン5人が一同に集まりミキを偲ぶ会を開く。皆ハンドル・ネームだから本名も素性も知らないし、顔を合わせるのも初めて。舞台は彼らの集まった一部屋の中。他に場面転換は無く1時間48分のドラマが展開する。余程、脚本や演出が優れていなければ、直ぐにダレる。

   ところが凄い。一瞬たりとも飽きさせずに5人の絡みが続いて行く。乾杯(献杯だろう!)をし、和やかにミキの思い出を語り、秘宝のミキのナマ写真を披露する。誰がどれほどミキに近かったかと互いに競争をするのが面白い。ところがミキのある出来事を巡り、怒鳴り合い、殴り、蹴飛ばし、ナイフで殺そうとまでする。それぞれがミキとは親しいようだがその深さや関係が分らないままに、彼女の死が他殺だとか、事故死だとか、様々なしっかりした推論を並べて真相に迫り、ミステリー要素が強まる。

   脚本の古沢(こざわと読む)良太が優れている。「ALWAYS 三丁目の夕陽」の脚色で一躍注目を浴びたが、「十二人の怒れる男」のような、ワンシチュエーションのドラマを書いてみたいと思っていたと。思うのと書けるのは別。それを見事に実現させた古沢の実力を認める。監督はカーリングの乙女たちを描いた「シムソンズ」で注目された佐藤祐市。演出力に加えカメラワークも見逃せない。狭い一室でカメラ位置も角度も難しいがTV出身にも拘らずクローズアップを捨ててミドルショットに終始したのは心地良かった。

   5人の登場人物、家元、オダ・ユージ、スネーク、安男、イチゴ娘。召集をかける家元は「あずみ」の小栗旬。舞台やTVでも大活躍だ。オダ・ユージと実在の俳優名を名乗るのが「UDON」のユースケ・サンタマリア。スネーク役はTVドラマで活躍中の小出恵介。コミカルな安男はお笑いコンビ、ドランクドラゴンの塚地武雅。「間宮兄弟」でも優れた芝居をしていた。イチゴ娘を演じる「ゆれる」の香川は出演者の中では最年長の42歳。若いキャストをお兄さん的にまとめたそうだ。この5人の俳優は演技力も優れ、一瞬の飽きもなくエンドマークが出るまで観客を引っ張る。

   こんな秀作が6月16日から公開されるが、劇場は東京では渋谷や池袋の小さな小屋。小さくても良いから日比谷や銀座の劇場で公開しなくてはメジャーになれない。TV局製作のジャンク映画がノサバり、佳作が場末の片隅に追いやられる。悪貨は良貨を駆逐するか。

恵介
★★★★☆
キサラギ
2007年日本映画、ショウゲート配給、1時間48分、2007年6月16日公開
監督:佐藤祐市
出演:小栗旬 / ユースケ・サンタマリア
公式サイト:http://www.kisaragi-movie.com/
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