アメリカにMPAA(Motion Picture Association of America)と言う団体がある。映画のレイティング、R(成人向け)とかPG(両親付き添い)などを決める。Gレイト(一般向け)が一番良く、子供でも大人でも、両親が付いていなくても見られる。つまり一番制限なく見られる映画と言うわけだ。それだけ門戸も広い。R指定映画では観客が制限され、興行成績の大きなチャンスを失う。
「喫煙シーン」があると成人指定映画になってしまう!?
大人向け、18歳未満禁止のR指定にひっかかる要素はセックス(裸とか性行為など)、暴力、汚い4文字言葉(FUCK、SHIT、などの濫用)などがあった。この度のMPAA裁定で、映画の中でのタバコ、喫煙がR要素として取り上げられることになった。「タバコを吸うことがカッコ良い」と言う描写(The film glamorizes smoking.)はR指定だと。
FOXの最近の作品で「サンキュー・スモーキング」があった。タバコ会社に雇われたPRマンが社会の禁煙運動に対抗するため映画会社に乗り込み、映画の中でどんどんタバコを吸うシーンを増やし、タバコをカッコ良く見せるアイディア。この提案に乗ったように確かに映画の登場人物はやたらとタバコを、それもうまそうに吸う。
しかし、5月10日にもたらされた今度のMPAAの裁定は、未成年にそういうシーンを見せて喫煙を勧誘するのはいけないというのだ。禁煙モードの現代劇ならともかく、タバコの害が騒がれていない70年代までの昔の社会を描く作品ではどうするんだ、それでもR指定か?などの不満がプロデューサーたちから聞こえて来ている。
映画の「短期DVD化」 劇場主が猛反発
最近は、映画が短期間でDVD化されることが当たり前になった。映画公開の終了後、先ずDVD、VHSや有料放送(Pay Per View)になり、その後フリーTVに登場と言うパターンだ。DVDが大流行して、劇場だけで補えなかった製作費などは完全にプラスに転じる力をつけた。 しかし海賊版DVDも中国や東南アジア、南米に蔓延して、映画スタジオに年間6000億円を越すダメージを与えている。予防策はDVDへのウィンドウ(移行期間)を短縮することだ。海賊版が出る余裕時間を与えないという戦略。だから昔は1年経たなければDVDが手に入らなかったのが、今では最長で3か月。
映画公開時期も、日本ではアメリカに遅れること1年はザラだったが、そんなに空けると海賊版が入ってくる、と世界中で同時公開が普通になった(「スパイダーマン3」はアメリカより3日も早い)。またアメリカが金曜初日なので、土曜初日の日本も徐々に金曜初日に切り替えて来ている(「パイレーツ・オブ・カリビアン3」「ザ・シューター」など)。
このスタジオ政策に怒ったのは劇場主。同時公開は宜しいが、短期DVD化は見過ごせない。まだ上映しているし客は入っているから延映もしたいのに、DVDが発売されれば商売に影響が出るではないか!怒った劇場主がデモ行為に出る。ドイツとイギリスの200を越える劇場主が、この春大ヒット中の「ナイト・ミュージアム」の上映を突如打ち切るという行動に出た。スタジオは映画興行とDVD売り上げは同じ財布だから弱り切っている。
「忠犬ハチ公」リチャード・ギアで再び映画化
渋谷駅前で、死んだ主人を待ち続けた忠犬ハチ公の実話は有名で、駅前広場には銅像も建っている。もっとも最近の若い人たちは「何でここに犬がいるのだろう?」くらいの認識しかない。1987年に「ハチ公物語」として、監督・神山征二郎、脚本・新藤兼人、主演・仲代達也、八千草薫で映画化もされている。
この映画にハリウッドは目をつけた。リチャード・ギアがインスパイアされて(最近はリメイクとはなかなか言わない)「HACHIKO」の製作と主演をすることになったのだ。ギア扮する大学教授が捨て犬を拾い、犬との交流で生涯離れられない絆を作り上げて行く物語。脚本は「House at the End of the Drive」のステファン・P・リンゼイ。撮影は9月からで松竹との共同製作。従って日本では松竹の配給。監督は数日のうちに決まる予定だ。