恋愛ドラマには2種類ある。すなわち感情移入できるものと、そうでないものだ。主人公が男の子目線のこのドラマに、私がすっかり入り込んじゃってるのは何ゆえか。
幼なじみの礼(長澤まさみ)の結婚式当日。ずっと思い続けていたのに、告白すらできなかったことを激しく後悔する健(山下智久)。そんな彼の前に“妖精”(三上博史)が現れ、過去に戻ってやり直すチャンスをくれるという。かくして健は、礼を取り戻すべく高校時代にタイムスリップ・・・。
妖精といえば、「夏の夜の夢」みたいに緑のタイツをはいて飛んだり跳ねたりするものと思い込んでる私には、このオジサンただの怪しい人にしか見えないが、回を重ねるにつれ、健とのとぼけた会話がけっこう可笑しい。
一方、健役の山下くんはなんだかいつも、かったるそうだ。しゃべり方といい、動きといい覇気がない。過去に戻れる魔法の言葉「ハレルヤーチャンス!」を叫ぶときも、必死さが足りない。だけど第2話、モンパチのCDにはさまれたメモから礼の思いに気づき、突然走り出す姿にココロ揺さぶられてしまった。
暗号のような文字の先にあったのは、図書室の棚に置かれた自分へのバースディプレゼント。6年前には見つけることのできなかったものだ。居ても立ってもいられない気持ちが、その走る姿に現れていた。いいじゃん山下くん、もっと彼を走らせろ。
さて、せっかく過去に戻っても、花嫁略奪作戦はなかなかうまくいかない。結果がわかっているのだからその逆をいけばいいのに、性格までは変えられないのだね。モタモタしたあげく、ああ、やっぱり今回もダメなのかと・・・。でも最後に健は、自分にできる精一杯を示すのだ。それがちょっとヒネリが効いていて胸を打つ。
黒板に書いた渾身のメッセージとか(結局、礼が見る前に消されちゃったけど)、卒業式、失くしてしまった制服の第2ボタンの代わりに、彼女と共に過ごした想い出深い野球部のユニフォームのボタンをプレゼントしたり。
どうしたら礼の笑顔が見られるのだろうと、ひたすら彼女を見つめ続ける健。そんな彼の視線を追っているうちに、いつしか気持ちが同化してしまう。見つめることが、好きだということのすべてだった時代もあったよね。
ノスタルジーをかきたてられるシーンもいっぱい。名前の文字を数字に変えて計算する相性診断、そういえばやったやった。制服の第2ボタンの儀式が記憶にないのは世代が違うからか? あ、そうだ。私の高校は制服がなかったんだっけ。
果たして最終回には、健は礼の隣りに座っているのだろうか。そうはいかないかもしれない。ライバルが藤木直人だからねえ、こっちはこっちのドラマがあるだろうし。がんばれ健!と、起死回生を念じ続ける私である。