「歌謡曲だよ、人生は」
素人の脚本、目もあてられないストーリー

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   昭和の時代を楽しませ輝かせた歌謡曲。それが今は見る影もない衰退ぶり。その歌謡曲にスポットを当て、過去の栄光を取り戻そうとする映画。コンセプトは分かるし、筆者も歌謡曲ファン。30年代40年代にあれほど愛され膾炙された歌謡曲が今はどうしてしまったのか? 映画で取り上げ、もう一度歌謡曲の良さを広めようとの制作意図は大賛成。取り上げた歌謡曲は「僕は泣いちっち」「小指の想い出」「ラブユー東京」「乙女のワルツ」「逢いたくて逢いたくて」「東京ラプソディ」など大ヒット12曲。それぞれの歌を10分程度の小品で綴るオムニバス形式。

(c)2007 アルタミラピクチャーズ/ポニーキャニオン/ザナドゥー
(c)2007 アルタミラピクチャーズ/ポニーキャニオン/ザナドゥー

   総ての監督が脚本を書いているが、これが素人集団。監督を経験したことの無い人も多い。「乙女のワルツ」は編集マンの宮島竜治、「みんな夢の中」は照明技師のおさだたつや。「小指の想い出」はプロデューサー稼業のタナカ・T、「いとしのマックス」は漫画家・蛭子能収など。「これが青春だ」の七字幸久と「ラブユー東京」の片岡栄子はこれが監督デビュー。映画屋さんたちの仲間内の仲良しパーティの感がある。これまで監督を経験したのは「僕はないちっち」の磯村路一が「解夏」など、「女のみち」の三原光尋は「村の写真集」、「ざんげの値打ちもない」の水谷俊之は「人間椅子」、「逢いたくて逢いたくて」の矢口史靖は「ウォーターボーイズ」、「東京ラプソディ」の山口晃二は「ベルナのしっぽ」。しかし演出はともかくそれぞれの監督が自ら書くストーリーがなっていない。

   目もあてられないストーリーの連続に酷い絵。映画畑に長年いても素人は素人。人様にお見せする映画はしっかりした脚本家に書いて欲しい。まだ歌詞の絵解きでもしてもらった方が納得が行く。

   中に面白かった作品が二つある。一つは三原光尋の「女のみち」。ヤクザに扮する宮史郎がサウナに入って「女のみち」を歌おうとすると歌詞を忘れている。隣の純情そうな青年を脅しすかして歌詞を思い出そうとするだけの話だ。生涯たった一つの宮のヒット曲、何百万回歌ったか分からない歌詞を忘れると言うギャグは面白いし愉快。宮の素人芝居も微笑ましい。

   もう一つは矢口史靖の「逢いたくて逢いたくて」。アパートに引っ越してきた若夫婦(妻夫木聡・伊藤歩)が、前の住人の恋しい女性に宛てた大量のラブレターを発見。返事が無く絶望した住人は去って行ったのだ。引っ越しパーティの最中に届く女性からのイエスの返信。若夫婦は手紙を手に、去って行く男を追いかける。ストーリーがしっかり組み立てられており小さな感動も得る。

   昼から銀座和光裏のシネスイッチで試写と言うのも珍しいが、終わったらキャバレー「白いバラ」で完成披露パーティだと。昭和30年代の雰囲気だよなー。一般の方もどうぞと言うが、関係者がぞろぞろ1ブロックを歩いていて加わる雰囲気ではない。ほとんどの小品は皆トラッシュ。それでも監督はじめスタッフやキャストが見ているとみえ、仲間内で受けていて拍手が起こり、笑い声が聞こえるのがかえってシラける。銀座の真ん中、シネスイッチで公開と言うから、怖いもの見たさや酷いものは却って楽しいと言う方々はどうぞ。

恵介
★☆☆☆☆
2007年日本映画・ザナドゥー配給・2時間10分・2007年5月12日公開
監督・脚本:磯村一路 他
出演:宮史郎 / 妻夫木聡 / 伊藤歩 / 大杉漣 / 烏丸せつこ / 高橋恵子 他
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