日曜コラム:「テレビ局だのみ」映画会社の今そこにある危機

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TV局製作映画、「大宣伝」で駄作なのに大ヒット

   邦画各社が映画をアウトソーシングしたので、我も我もと映画好きが映画を作り出したが、ロクなものが出来ない。そこで任せとき、と現れたのがTV局。

   フジTVの亀山千広プロデューサーが登場する。TVと映画の境界線を越えて来た。「踊る大捜査線」「ナースのお仕事」「海猿」「大奥」「アンフェア」・・・。他局も続けとばかりに「TRICK」「ケイゾク」・・・。自信をつけたTV局プロデューサーは、TV演出家にTV脚本家を使って映画を作り出す。「愛の流刑地」「千年の恋」「明日があるさ」「ラブレター」「UDON」。。。TV局は自社の無料スポットを番組に挿入して大宣伝をする。だから当る。

   昨年のキネマ旬報選出「日本映画ベスト10」を見てみよう。

   1)フラガール 2)ゆれる 3)雪に願うこと 4)紙屋悦子の青春 5)武士の一分 6)嫌われ松子の一生 7)博士の愛した数式 8)明日の記憶 9)かもめ食堂 10)カミユなんて知らない。

   この中にTV局主導で製作した映画はTBSの「嫌われ松子の一生」だけ。亀山氏率いるフジ製作映画は皆無。昨年の「海猿」「ゲド戦記」など興行成績トップの作品群は1本たりともベスト10に入っていない。このように大部分のTV局製作映画は質の良くない駄作なのだが、製作するTV局のマスの無料スポットやPRのお陰で、大量の観客を劇場に足を運ばせ興行成績は数十億円にもなり、多額の利益を局と配給の邦画各社にもたらす。上がってナンボの興業の世界、勝てば官軍、質なんて問題じゃない、金を稼げれば良いのだ、という姿勢が見え見え。邦画各社はかくしてTV局におんぶに抱っこ。自分で良い映画を作ろうという姿勢はとっくに捨ててしまっている。

   だが考えて欲しい。日本映画の将来のことを。つまらない映画を見てしまった観客が映画離れを起こしてしまうことを。日本映画の絶頂の今こそ、日本映画の危機なのだ。

恵介