肩書きがいかめしい。税務署上席国税調査官。
企業の脱税行為に目を光らせる、いわゆる「マルサ」だった。番組では「マルサ」だったが、エンディングでは「元」をくっつけていた。同じようなものだろう。
42歳の口数の少ないが、堅実な仕事ぶりの「マルサの男」茶谷淳二が、包丁を持って銀行に押し入り女性行員を羽交い絞めにして人質に取った。
国税局査察部の肩書きなら、銀行には堂々と'威圧的'に入場する場面だろうが、このさいはお粗末。カウンター付近にいた女性行員(52)を人質に取って包丁を突きつけて脅迫。「1000万円用意しろ。逃走用の車もだ」・・・「税金を出せ」ではなかった。
1時間後にタバコを勧められて、その一瞬をついて女性行員が逃げて「マルサ」は御用。緻密なマルサらしからぬスキをみせ、あっけなく逮捕された。ふところの所持金は数千円だったという。
凶悪な常習犯罪者ではない人質をとった銀行強盗事件とは一味違うニュース。そこで犯行の動機は「なぜなんだ?」という切り口になる。
「仕事のことでストレスに悩んでいたというじじゃないですか。でも一歩間違えたら大変なことですよ」と加藤浩次は一般論。これに八代英輝がさとすようにいった。「仕事で悩んでいる人は、みんなそのために強盗をやりますか。情けないですまされませんよ」
――犯罪に職業、肩書きはいっさい関係なし。
文
初代不良家