刑事ものや推理ドラマを見ていると、犯人の気持ちになってしまっていることが多い。だから「古畑任三郎」とかで、犯罪が暴かれていく様子に息が苦しくなってくる。ひょえーっ見逃してくださいまし、と懇願したくなるような。いったいワタクシ前世でどれだけ悪いことをしてきたのでしょうか。
その点これは気が楽。なにせ事件はすでに時効だから。総武警察・時効管理課勤務、霧山修一朗(オダギリジョー)が事件を捜査するのは、あくまでも趣味。
前作では遅い時間ということもあって、実は半分眠りながら見ていた。ところが今回、感想でもと思いしっかり集中していたら、ややっ、こんなに面白いドラマであったか。細部にまでギャグ満載、職場の仲間とのノーテンキなやりとりに始まり、鈍器に「ドンキ・ホーテ」、黒板に「残尿禁止」なんて落書きに至るまで、油断できない。録画してチェックしたくなるほど。
第1話の「訓読みの"くん"は音読みなんです」やら、2話の「オッサンを表す音はEm(Eマイナー)」やら、どうでもいい話がいちいちツボにはまる。以前誰かに「姿」と「妾」は文字の成り立ちと意味が入れ替わっていると言われたのと同じくらいのオドロキ。そしてオッサンの音色は、同じマイナー系であっても、たしかにAmやDmではない。
それにしてもこの職場の人たち、仕事してるんでしょうか。机の上がさっぱりきれい。雑談切り上げて任務に戻る人に「働くの?」って課長。何しに来ているのか。ハンコ押してるだけに見える。この課長を筆頭に又来、サネイエのトリオ(岩松了・ふせえり・江口のりこ)は、「踊る大捜査線」のスリーアミーゴスを超えちゃってるかも。
霧山の趣味につき合う三日月くん(麻生久美子)も、交通課なのに時効管理課に入り浸りだし、自称「刑事課のエース」こと十文字疾風(豊原功補)は、張込みや変装の練習として、かくれんぼやコスプレを楽しんでる。いいなあ、ユートピアだわ、ここ。
さて、肝心の推理の方ですが、まだギャグで見せてもらったほどの「目からウロコ」がないのが惜しいとこ。願わくばこっちでも唸らせてくれ。名作「トリック」を生んだ時間枠。これもいずれ映画になっちゃうのか? いや、大画面には向かないか。重箱のスミを味わうドラマだからね。
最後に犯人は、霧山から「誰にも言いませんよ」カードをもらえる。オダギリジョーと秘密を共有できるなんて、かなりステキ。