旅を終えて
「学びて時にこれを習う、またよろこばしからずや。朋あり、遠方より来たる、また楽しからずや――」
孔子を持ち出すのは、この時代、さすがに古くさく見えるかも知れない。だが、代表的な現代語訳を読んでみると、まあまあいいことをいっているのである。
学んでは適当な時期におさらいする、いかにも心嬉しいことだね。そのたびに理解が深まって向上してゆくのだから。だれか友だちが遠い所からもたずねて来る、いかにも楽しいことだね。同じ道について語りあえるから。(金谷治訳)
韓国と日本のともに78歳の男が2人、心のおもむくままに韓国縦断の旅に出た。飢えれば食らい、渇いては飲み、日が暮れると泊まる。その間、お互いに語り合って飽きることがなかったのは、道を同じくしているからだった。先の文章が「論語」の巻頭に置かれた意味に、いやでも気づかされた旅行だった。山口先生はこの5月、再び釜山を訪れ、姜先生に会うという。
文・穴吹史士 撮影・白谷達也