マーベル・コミックを原作に02年に始まった「スパイダーマン」はどん底に喘いでいたソニー映画を立ち直らせ、04年の2作目と合わせると全世界で2000億円近くを売り上げた。3年を待ちトリロジー完結編。サムとアイヴァンのライミ兄弟は今までの要素を全部入れて2時間19分の長尺の作品に仕上げている。
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役者にはそれほど予算を割いていないが、VFX(特殊効果)には惜しげもなく使い、製作費は従来の売り上げの15%に当る300億円を注いでいて凄い意気込み。全世界に先駆けて日本がGWに割り込んで5月1日からの公開なのに、アメリカを含む全世界は4日からとソニー本社に気を使った上映だ。
監督のサム・ライミと医者の兄アイヴァンの二人で映画原案と脚本。俳優はシリーズを通じて出演のピーター役トビー・マグワイアと、恋人MJ役のキルスティン・ダンスト。父親を殺されたと怒っているハリーも3作ともジェームズ・フランコ。ジェームス・ディーンそっくりさんで世に出た。サンドマンが「サイドウェイ」の色男トーマス・ヘイデン・チャーチ。カメラマンから黒ヴェノムに変身するトファー・グレイス。ピーターとMJとの三角関係グウェン役の金髪、ブライス・ダラス・ハワードはM・ナイト・シャマラン監督作品の常連だ。
大学生とスパイダーマン掛け持ちのピーター(マグワイア)。MJ(ダンスト)とのロマンスも順調。公園でデートの最中、近くに隕石が落下し、中から出てきた何やら黒いネバネバ物体がピーターのバイクに付着する。話は変わり、ある日の出来事。巨大クレーンが暴走してビルを次々と破壊する。高層ビルで事務機器CMの撮影中だったグウェン(ハワード)は、落下して地上に叩きつけられる寸前、スパイダーマンに救出される。グウェンの父(J・クロムウェル)は市警のお偉方。音頭を取ってスパイダーマンをNY市民が称える会を開く。ピーターは得意満面。式の壇上でグウェンのキスを受ける。見ていたMJは怒り心頭でピーターに絶交を宣言。
敵役が強くて多いほど、退治する過程が楽しめて映画は面白くなる。今回はニュー・ゴブリン、サンドマン、ヴェノムと3人も現れ、激突は今までにない充実。サンドマンの病んだ娘を救おうとお金に悩むソフトな面と、巨大なサンドマンになって暴力で暴れまわるハードな距離の差に驚き、違和感を持つ。ハリーは親友の側面と、ピーターを親父殺しと敵に廻る面の差異が凄い。
サム・ライミのバックグラウンドはホラー映画。宇宙から落ちて来たネバネバ物体が対象物を悪に染めるのは後で分かる。これがもとで、スパイダーマンがスターウォーズのA・スカイウォーカーのようにダークサイドに落ちかかるところは迫力がありハラハラする。ピーターは相変わらず鈍感で馬鹿な学生で、恋人の気持ちも分からない描き方は楽しめる。
2007年アメリカ映画・ソニー・ピクチャーズ配給・2時間19 分・2007年5月1日公開
監督・脚本:サム・ライミ
出演:トビー・マグワイア / キルスティン・ダンスト