終点アウラジは山間の寂しい村
アウラジ。「ぼくも初めて聞いた地名です。韓国固有の言葉なんでしょうが、意味はわかりません。現地で尋ねてみましょう」。元新聞記者の姜先生も知らなかったアウラジは、特急が走る幹線から、脇へひょろっと延びた、盲腸のような行き止まり線の終点で、動力車1両に客車1両がついた鈍行が、1日3往復するだけである。
最近、韓国の鉄道ファンに再発見されるところとなり、生活路線というより、なかば観光列車として生き延びていた。乗客は終点のアウラジまで乗ってきて、同じ列車で折り返し帰ってゆく。
姜先生(左)はアウラジの女とあっという間に意気投合。携帯電話の番号を交換してしまった
そんな観光客が帰ってしまったあとのアウラジは、山間の素朴で寂しい村である。駅前の通りにも、ひと気がまったくない。しかし、「タバン」(喫茶店)の看板が、ひとつあがっていた。姜(カン)先生も山口先生も、喫茶店世代とでもいおうか、タバンがあると、入ってみないと気が済まない。店主は李麗仙に似た40歳くらいの女性だった。「ザ・ファースト・インプレッション!」と姜先生が、英語で声をかける。第一印象が気に入ったらしい。