2月、3月が決算期の邦画各社の報告がまとまった。東宝が「LIMIT OF LOVE 海猿」「ゲド戦記」などの大ヒットで経常利益前年比7%増の255億円、松竹が「武士の一分」などで従来予測より+3億円、東映は「大奥」「男たちの大和/YAMATO」などの成功で上方修正+2億円。ホリプロまでも「デスノート」余波で経常15%増。
昨年は日本映画復活の年で興行成績のシェアが洋画を破り50%を越えた。金額ベースで940億円vs820億円、これは1985年以来21年振り、本数も403本vs383本で400本以上の公開は1973年以来33年振りだそうだ。50億円超の映画が6本もありこれは史上初だという。しかし本当に日本映画は復活したのか?日本映画は大衆に受け入れられたのか? 映画の質は向上したのか?答えはNO!である。
邦画トップはいずれも東宝配給で、1位が71.6億円の「ゲド戦記」、2位が71.0億円「LIMIT OF LOVE 海猿」。この2本を見た人で、さすが邦画は良いと感激した人はいるだろうか?ゲドは、パパ宮崎駿の息子が建築家のど素人であるにもかかわらず周りにヨイショされて作った作品だけに、ストーリーも絵も粗雑もいいところ。例えば主人公が父親を殺して、その理由も反省も説明も無く冒険の旅に出かける。冒険も中途半端で盛り上がりがない。
「海猿」はもっと酷い。フェリーが沈没して海上保安庁機動救難隊員の「海猿」が救助にあたる。船が沈没寸前なのにのんびり昔の上司と旧交を暖めたり、恋人と携帯で愛を交わしたり。あまつさえ司令室に一市民である件の恋人が入り込む。沈没寸前のフェリーの中では脱出を助ける隊員が煙突横の脱出口から逃げようとするが、船が完全に横になり黒煙に包まれているのに青空がはるか前方に見えたり、横だから這って行けば良いのに垂直に上ったり、ドウしてぇー?ばっかり。
興行の世界では上ってナンボの世界だけにそれで良いかも知れないが、見た観客が「映画って本当に詰まらないのだなぁー」と思うと、それから劇場に足を運ばなくなるのだということを理解して欲しい。映画は宣伝PRが第一。広く知らしめなければ誰も劇場へ足を運ばない。製作がTV局の場合は自社のスポットや番組を使い、無料でバンバン宣伝を入れる。それはもう見ている方が嫌になるくらい露出をする。
宣伝に釣られて興行成績はうなぎ登り。成績が上がればTV局の収入が増える。フジテレビなどは収益に映画が大きなシェアを占めている。ホリエモンに騙されたり、本業の放送事業にかげりが出ているので、映画製作への傾向は「踊る大捜査線」から一段と加速している。この流れをモロに受けている被害者はFOX、WB、SPE、UIP、BVなどのハリウッド系メジャーの配給会社だ。宣伝PRが最重要課題。そのため各社40億~70億円の年間マーケティング費用の70%超をTVスポットに投入する。
TV局にとっては有難いクライアントだがそれ以上でも以下でもない。通り一遍のサービススポットやPRはやるものの、担当者どまりで局がバックアップする訳もない。何故ならクライアントではあるが、間違いなく自社製作の映画のコンペティターで、誰が「塩」を送るものか。つまりメジャー各社はTV局へ、TV局製作の程度の低い日本映画をヒットさせるエネルギーを供給しているという図式だ。いい面の皮とはこのことだろう。来週の日曜(5月6日)は、邦画各社の映画製作における不甲斐なさについて論ずる。