最近はジャリ向けの漫画映画が大変身をしている。春休みや夏休みに子供たちにせがまれて両親が映画館へ連れて行く。ところが今までの漫画映画はとてもじゃないが大人の鑑賞に堪えられる作品には程遠い。大人たちは映画館の飛行機並みの豪華客席ですっかりお休みになり、日ごろの仕事疲れや家事疲れを癒して、後のランチや歩行者天国に付き合える精力を確保してきた。
(C)2007 青山剛昌/小学館・読売テレビ・日本テレビ・小学館プロダクション・東宝・TMS
「大変身」とは大人が寝られなくなったということ。アメリカの3Dアニメ「トイ・ストーリー」「アンツ」「ファインディング・ニモ」から始まり「シュレック」「カーズ」「ハッピー・フィート」などなど大人も楽しませる作品が怒涛のように日本の子供向け映画市場を席巻した。アニメ王国日本も黙っていられない。40-50分のTV漫画延長の「子供だまし」作品では将来が無い。だからがらりと大改革をしている。
例えば「新ドラえもん 魔界大冒険」。いつもなら大山のぶ代の馬鹿声でどうってことの無いストーリーで「おとーさん、お休みなさーい映画」が、なんと直木賞作家の真保裕一が脚本を書き、才媛、寺本幸代が演出する。おとーさんは眠っている暇が無い堂々のSF巨編。そこらの大作も顔負けの1時間55分のランニングタイム。水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」はTVアニメから実写となり、人気のウエンツ瑛士と井上真央が主演する。GW公開の松竹一枚看板だ。東宝のGWは定番「クレヨンしんちゃん!嵐を呼ぶ歌うケツだけ爆弾!」と「名探偵コナン 紺碧の棺」だ。「クレヨン~」は低学年用のナンセンス、コナンは大人も楽しめる高学年用と棲み分けている。
青山剛昌原作のコナン映画は1997年に始まり、ストーリー展開がミステリーでスリルもあり大人も楽しめる。だから唯一大変身はしなくとも良い漫画なのだ。去年の「探偵たちの鎮魂歌」で10周年を祝ったが、この周年記念作品は過去の探偵たちを振り返りながらの展開で秀逸だった。毎回冒頭で主人公江戸川コナンは高校生の時、悪者の薬で小さい子供にされたが頭脳は明晰の少年探偵でぼんくら探偵毛利小五郎の手伝いをする、と説明があり、馴染みの無い大人は助かる。今回は「パイレーツ・オブ・カリビアン」の影響か海賊のお宝探しの二番煎じでやや鮮度が落ちる。
コナンたち少年探偵団はバカンスで小五郎の引率のもと太平洋の神海島へやって来る。島には古代遺跡・海底宮殿と300年前の女海賊の残した財宝の伝説がある。水遊びを楽しむ一行の前に宝を狙うトレジャー・ハンターが現れる。
コナンが得意気に説明する事件の顛末はなるほどと思わせる要素が沢山ある。推理とサスペンスが売り物だが、十分に見ごたえがある。この作品はやや落ちるもののシリーズとして次回も期待が持てる。
2007年日本映画・東宝配給・1時間46分・2007年4月21日公開
監督:山本泰一郎
声:コナン:高山みなみ、毛利蘭:山崎和佳奈、毛利小五郎:神谷明