NYで初日(2007年3月9日)に見たが超満員。先週末までの1か月で2億ドル(約240億円)の興行成績を挙げている。観客は殆どが男性。日本では映画を見るコア層は若い女性だが、アメリカでは若い男性だと言うことが良く分かる。男同士の肉弾戦、筋肉の収縮、飛び散る汗、噴出す血飛沫。観客層の違う日本でどうマーケティングするか、配給のWBの腕の見せ所。
勇猛果敢なスパルタ兵
(C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
レオニダス王の率いる精鋭300人のスパルタ軍が、100万人を超すクセルクセス大王率いるペルシャ軍と対峙する。華美な軍服や派手なゴールドの仮面をつけたペルシャ軍は巨大な怪力男や猛進するサイ、巨象の群れを伴っているのに対して、スパルタ軍はフェイスマスクと赤いケープを纏い、槍と剣を武器として逞しい筋肉に包まれた肉体で戦う。
アメリカ映画はアメリカの「敵」を探している。「敵」は強くて醜くておぞましくなければ面白くない。西部劇では獰猛なインディアンだったが、現在は先住民と呼ぶように同じアメリカ人としての人権を重んじる。移民として存在感が増した黒人やヒスパニックも昇格した。東西冷戦の時代、ソ連は冷血で陰謀を巡らす敵だったが、鉄のカーテンが取り払われてしまうと人の良いスラブ人たちだ。麻薬がアメリカを蝕んでいた時代は、コロンビアが許せない存在だった。
そして今は中近東のアラブ人。ペルシャ軍こそイランに引き継がれる、天の下、存在を許さない憎悪の対象だ。見るからに醜いペルシャの兵士たち、おぞましい怪力男、地を這いつくばる唾棄すべき裏切り男エフィアルテス。クセルクセス大王は見た目は美しいが、両性の怪物。
それに引き換えスパルタ軍はイケメン集団。誰もが清清しい優男、それでいて勇猛果敢、敵を槍で突き刺し、刀で首や四肢をぶった切る。切りつけ刺し殺して血がドバーっと飛び散り、撥ねられた首が宙を舞う。その度にアメリカ人男性観客たちの声援や拍手が起こる。
世界史教科書でも学んだ有名な「テルモピレー」の戦い。フランク・ミラーのグラフィック・ノベルが原作。最後は自分たちの勇壮な戦いを伝えさせるために、一人の伝令ディリオスを故国に走らせる。結末は歴史で習ったとおりだが、CG技術を加えて肉弾相打つ戦闘の凄まじさ。
レオニダス王のジェラルド・バトラーは「オペラ座の怪人」で素晴らしい歌声を聞かせてくれた俳優。一変してにっくきアラブ人をバッタバッタとなぎ倒す筋肉隆々の偉丈夫。向こうの俳優は守備範囲が広いね。
監督・共同脚本:ザック・スナイダー
出演:ジェラルド・バトラー/レナ・ヘディ/ヴィンセント・リーガン/デイビッド・ウェナム
2007年アメリカ映画・ワーナー・ブラザース配給・1時間57分・2007年6月9日公開