「ロッキー・ザ・ファイナル」
非力な挑戦者、原点帰りが面白い

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   タフガイのシルベスター・スタローンも昨年還暦を迎えて60歳。ポルノ映画に出るなどして糊口を凌いだどん底の俳優生活を抜け出したのは30歳の1976年。脚本・主演の低予算映画「ロッキー」が大ヒットし一躍スターの座についた。

こぶしを突き上げる老ロッキー
こぶしを突き上げる老ロッキー
(c)2006 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc., Columbia Pictures Industries Inc., and Revolution Studios Distribution Company, LLC.

   王者アポロの気紛れマッチでチャンスを作り、本戦でアポロを倒して4回戦ボーイから世界王者になるアメリカン・ドリーム。鳴り響く勇壮なビル・コンティのテーマ曲。フィラデルフィア美術館の階段を駆け上がり拳を突き上げての雄叫び。1990年のシリーズ5まで続いた。

   それから17年、第1作から30年目でまたしてもロッキーはリングに上がる。60過ぎの体なんて見られたものでは無いだろうと思っていたが、ガウンを脱いだ肉体を見て驚く。さすが一流スター、見事に引き締まった筋肉を見せる。これなら映画も締まる。

   この3月26日、スタローンは日本に現れ記者会見をした。白いカジュアルのシャツに青いジーンパンツ。厚い胸囲の下の腹は誰の目にも見事に引っ込んでいる。

   昨年暮れアメリカで、そして世界各国で公開されて、キャンペーンは日本が最後。「大ヒットしてシリーズを始めたが、第5作など完全な失敗だ」と今全盛のシリーズものにも辛口ととれる話をする。「自分の快心のロッキーは第1作と原点帰りの今度のロッキーだ」「今日の東京が最後で私のロッキーと決別する」と万感を込めて挨拶していたのが印象的だ。翌日彼は、これも全盛期のリバイバル「ランボー」の続編を撮影中のジャングルへ戻った。

   老いたロッキーは地元でレストランを経営し、客に昔の栄光を語る毎日。ある日スポーツTVが、無敵チャンピオン、ディクソン(A・ターバー:実際のチャンピオン)が往年の王者ロッキーと対戦するシミュレーション放送をした。これにヒントを得たディクソン側がロッキーとのエキジビションを提案する。

   どう考えても老ボクサーが現役チャンピオンに勝てる訳が無い。だがフットワークやパンチのスピードでは敵わないものの、打たれ強くそして一発当たったらパンチ力は優れていると言う想定は納得性がある。老いたモハメド・アリとG・フォアマンの試合を思い出して欲しい。打たれ続けたアリが放つ一発のパンチでフォアマンは沈んだ。

   かくして凄絶なボクシングマッチは迫力充分に展開される。相手を見下す王者に立ち向かう非力な挑戦者。これはロッキーの原点帰りだ。大ヒットした原点帰りこそ面白いし興奮する作品に仕上がっている。

恵介
★★★★☆
ロッキー・ザ・ファイナル(ROCKY BALBOA)
監督・脚本:シルベスター・スタローン
出演:シルベスター・スタローン/アントニオ・ターヴァー/バート・ヤング/マイロ・ヴィンティミリア
2006年アメリカ映画・20世紀フォックス配給・1時間43分・4月20日TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他全国ロードショー
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