「なくならないもの」の代名詞の一つになりつつあるのが、学校の「いじめ」問題だ。そのいじめ問題解消の足がかりになるのではないかと期待されている授業がある。生徒間にコミュニケーションのきっかけを与える「エンカウンター」と呼ばれる授業だ。
4月3日放送の『プロフェッショナル 仕事の流儀』のゲストは、そのエンカウンターのパイオニア、中学教師の鹿嶋真弓。
エンカウンターでは、ある具体的な場面に関する課題が生徒に与えられ、そのときの気持ちを率直に語り合うことが求められる。たとえば、「熱気球に乗って旅行に出かけている最中にトラブルがあって、どんどん高度が下がっている。いらない物から捨てていかなくてはいけない。捨てる順番を決めよ」と問題を生徒に示す。そして、「きれいな空気を吸う権利」「正直な意見が言え、それを聞いてもらえる権利」「いじめられたり、命令 服従を強制されない権利」など10項目の中から捨てる順番を決めさせて、語り合ってもらう。
このように生徒間でコミュニケーションを図らせることによって、子ども同士のネットワークを構築させる。それがいじめ解消に繋がる、というものだ。鹿嶋は実際に、いくつもの荒れたクラスをこの手法で立ち直らせてきた。
これはかなり的を射た手法ではないかと思う。中学生といえば自己主張欲が高まり始める一方で、それを抑制する術をまだうまく知らない年頃ではないだろうか。自分達の平均を超えた能力や才能を持つ同級生が現れれば、嫉妬し、それを排除したくなる。それがいじめなのではないか。その時期に、鹿嶋の様な授業を通し、全ての人間が自分とは違う価値観を持っているのだと気づかせることは、いじめの根本的な芽を摘むことになるのではないか。
しかし、鹿嶋は「エンカウンターっていう授業は万能だと思ってしまっていいんですかね」との問いに「それはマズいとおもいますね」とはっきり答えている。人とうまくつき合う能力に欠ける子ども達も沢山いると聞く。彼らにはエンカウンターの前に、育ててあげなくてはならない能力がある。
やはり"いじめ"は、一筋縄にはいかない問題なのか。